コロナ時代の復旧・復活・復古

 復旧、復活、復古。という3つの概念がある。

 まず、復旧。コロナについて、大方の人は1日も早く昨日の状態に戻りたいと願っている。つまり、元通りにすること。復旧の「旧」とは、2019年12月という直近の「ノーマル状態」を指している。コロナ期間が一時停止であり、その停止が早急に終わり、昨日という止まった場所から再開することを人々が望んでいる。

 次に、復活。復活とは、いったん死んだものが、息を吹き返してこの世に再現することを指す。たとえば、高度化されたサービス業が萎縮し、サプライチェーンの短縮や個人間取引の増加によって昔の交換経済に近い状態が戻りつつある(ITという新しい基盤をベースに)。政治的には、社会主義理念の復活(格差・差別解消という新しい姿で)が典型例といえる。

 最後に、復古。昔の状態・体制に立ち返り、戻ること。科学技術が発展し、社会が進化している以上、フィジカルに不便な前近代に戻るのではなく、前近代のある種の体制や理念が近代の技術によって新たな姿となり、(復活の集結、複合的に)蘇るということだ。たとえば、第三次産業の集約・衰退とともに、第二次産業や第一次産業の再興がこれにあたる。

 今は、復旧はもうあり得ない。数多くの復活によって、全体的に社会や世界が復古に向かいつつある。

 東洋には「輪廻転生」という思想があって、西洋の場合、ニーチェが主張した「永劫回帰」の概念がある。両者は似ているが、違う。しかし、この2つの概念を足して2で割ると、どうも、今のコロナ世界にいちばん近いように思えてならない。

 新しい形態による復古が世界を変える。

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