新型コロナ対策、日本が失敗したのは有事法制の不備ではない

 新型コロナウイルスの初動ないし後続対応が杜撰である。日本政府は有事法制の不備で、責任逃避している。はたして法律不備の問題であろうか?

 ダイヤモンド・プリンセス号の対応について、そうした部分があったかもしれないが、ただ、本質的な原因はクルーズ船ではなく、中国人・中国滞在者(日本人を除く外国人も含む)の全面入国禁止に踏み切れなかったことにある。

 出入国管理法は5条1項14号で「日本の利益や公安を害する恐れがあると認められる者」の日本国上陸(入国)を拒否することができる。法的根拠が明確である。現に湖北省や浙江省等特定地域滞在者の入国を拒否したのも、これに基づいているだろうから、単に中国全土に適用範囲を拡張するだけである。

 たとえ地域限定の入国拒否であっても、現にザルのようなもので、いくらでも抜け道があったはずだ。さらにウイルスがすでに中国全土に広がった以上、地域限定の実効性はほとんどない。諸外国が相次いで踏み切った中国全域滞在者の入国禁止措置がもっとも基本的な水際作戦ではないだろうか。

 法律の問題ではない。今回の事件を教訓に後日有事法制の整備など、悠長なことを言っていられない。そうしたことを言う暇があったら、さっさと全面入国禁止措置を講じたらいい。現にここまで事態が発展しても、未だに動く気配がない。

 中国への忖度もあるだろうが、最大の問題はやはり経済のつながりではないだろうか。今さら過剰な中国依存を非難しても仕方がない。逆に中国との経済的つながりを今後長期的に維持していくためにも、短期的な遮断がもっとも有効的な施策ではないだろうか。このまま日本国内の災害が拡大していけば、将来的にむしろ中国との経済的関係が全面的に毀損しかねない。

 さらに習近平国家主席の国賓来訪(個人的に、私は賛同していないが)についても、同じだ。日本国内がぐちゃぐちゃになった時点で予定通りの来訪を迎え入れられるのだろうか。国賓来訪にはまず、日本国内のクリーンな環境整備が大前提である。この趣旨のもとで一時的な遮断をすると事情を北京側に説明すれば、理解してくれたはずだ。

 最後に何といっても東京オリンピック。それが中止になれば、損害が計り知れない。日本経済に致命的な一撃になるかもしれない。五輪開催を確保するためにも、とにかく過剰すぎるくらいの防衛措置を早い段階で全面実施する、というのが現実的な戦略・施策ではないだろうか。

 1月下旬に、中国全土対象の入国禁止を思い切って実施しておけば、いまの日本の状況はまったく異なるものになっていたはずだ。1月27日、私は首相官邸にこの旨の提案を申し入れたが、残念ながら、何ら反応もなかった。

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