武漢在留邦人救援チャーター機、8万円を取るべきか?

 新型コロナウイルスが広がる武漢市、湖北省から在留邦人を救出するため、政府がチャーター機を派遣した。今回は日本政府にしては早い決断で歓迎すべきだ。ただ、チャーター機は無料ではない。政府は搭乗する日本人に対し、片道分の正規エコノミー料金で約8万円分を請求する方針だ。これについてどう考えるべきだろうか。

救援チャーター機ANA1951便が武漢空港に着陸する(Flightradar)

 私は政府の決定に全面的に賛同する。理由を2点言おう。

 まず、1点目は金額の妥当性

 片道分の運賃を取っているというが、実際に飛行機は往復飛んでいる。行きは関係者(医師・看護師など)しか乗っておらず、「カラ運航」であってコストは回収できない。本来ならば往復料金を請求すべきだった。

 さらに、チャーター機の手配は簡単ではない。政府間のやりとりを別として、事務レベルで、1機につき200人もの日本人搭乗者を集めるだけでも骨が折れる。事前の募集や身分確認、連絡も大変だが、何よりも全員勝手に自分で移動手段を手配してもらい、武漢空港に規定の時間に現地集合させるわけにはいかないからだ。

 武漢市だけでなく湖北省内では複数の都市が封鎖されており(公式発表以外に自主封鎖している街や村もある)、市内外を含めて交通手段が皆無に近く、各地域間の道路も寸断したり、円滑に利用できる状態ではない。

 一方では、数百人もの人が各地に散らばっている。どうやって空港に集めるか、その手配だけでも大変だ。 運航や手配等諸コストを考えると、このような非常時のチャーター機手配はいくらかかっているか。むしろ政府が公表したほうがいいくらいだ。1人8万円ではすまないはずだ。

 次に、2点目は公平性・平等性の問題

 救出コストの不足分(差額分)は、政府が国民の税金から拠出することになる。2~3機ならまだしも、今後被害が拡大し、北京や上海等大範囲に及び(すでにその様相を呈している)、大量のチャーター機救助を必要とした場合を考えてほしい。

 武漢チャーターは無料提供だったから、上海は有料に切り替えていいのか。前例踏襲でなければ、同じ日本国民に不平等ではないか。そもそも料金以前の問題、物理的に資源の有限性からいえば、武漢の数百名程度でさえも大変だったのに、上海や北京となれば、数万ないし十数万人の規模ではチャーター機を派遣できるかという前提すら危うくなる。

 以前、金融危機のとき、メガバンクは「Too big to fail」、規模が大き過ぎて潰せないというが、邦人大規模滞在の国・地域の邦人救出になると、「Too big to save」、規模が大き過ぎて助けられない、と。この話は、私が日本企業向けのリスク・セミナーで何回も何回も指摘してきた。

 そもそも論になるが、中国の場合、数千万人のスーパー大都市を封鎖すること自体が、「Too big to save」を示すものではないだろうか。これは、私が中国在住日本人全員対象に、民間定期便が飛んでいる間に退去しよう(一時帰国して様子見する)と呼びかけている理由でもある。

 チャーター機の有料運航を、「貧乏人差別」「弱者切り捨て」と批判する「公平論」「平等論」を唱える正義代弁者たちは、純粋なのか、無知なのか、熱血なのか、偽善なのか、あるいはその混合なのか、それは知り得ないが、現実の問題が解決できるなら、私も美辞麗句を唱えたい。

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