人件費コスト増は不可避か?2010年以降の中国

 先週、私は北京出張中に大変な交通渋滞に何度も巻き込まれた。それは、年一度の「両会」の開催にぶつかったからだ。中国では毎年3月上旬、全国人民代表大会と政治協商会議の全国委員会会議がほぼ同時に開催する。日本の衆議院と参議院に似ている面もあり、二つの会を合わせて「両会」と呼ばれている。

 全国政協委員会の賈慶林主席は常務委員会活動報告を行った。長い、長いこの報告だが、ざっと読んで、注目点をピックアップしてみた。

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 何といっても「貧富の格差の解消」。賈慶林主席の活動報告だけではない。政協委員の中からも、貧富問題が取り上げられ、多数の提案が上がっているようだ。社会保険や義務教育といった再分配、または慈善性社会公益分配制度の構築は、取り上げられているが、いずれも中長期的に大量な社会的資源の投入を必要とするものだ。足元を見れば、労働賃金収入の引き上げがもっとも手っ取り早い。つまり、第一次分配だ。そこでまず着目されるのは、労働賃金引き上げの法制度化にほかならない。

 昨年後半から、私は顧客企業にまず、賃金法時代に備えた経営戦略を提案しはじめた。今年に入ってから、この公開ブログでも、「賃金法時代の到来、賃金引上げで企業経営への影響は?」を書いた。また、実務の話として、2009年末にもすでに早々と「賃金法セミナー」を企画し、今年2月初旬、そして、先週3月初旬相次いで上海と北京で開催した。

 コンサルティング会社の中でも、中国一の早い対応ではないかと思う。

 新法や政策の変動に、日系企業はどう対応するか。概ね以下4通りだ。

 タイプ1、法律が出てから、対応する。
 タイプ2、法律が出るまでに、対応する。
 タイプ3、法律が出なければ、対応しない。
 タイプ4、法律が出なくても、対応する。

 日系企業の大多数は、タイプ1ではないだろうか。それでは、遅い。というよりも、法律や政策に振り回されてへとへとになる。だったら、法律が出るまでに対策を考え、体制を整えようではないか。しかも、この賃金法の場合、「労働契約法」等一連の新労働法令に密接な関係をもっているし、むしろ、労働法令の対応とぴったり重なっている。だから、法律が出なくても対応するのが筋である。

 今回の結果、賃金法セミナーは上海3会場、北京1会場の全会場満席(一部定員超過)、合計170名近くの参加者を迎えることができた。日系企業はコンプライアンス意識だけでなく、自己防衛意識、リスク管理意識といった戦略的レベルの目線を徐々にもつようになったのである。とても、喜ばしいことだ。