中小企業へのコンサルティング

 福州で1泊して、A社人事制度のヒアリングと制度類のチェックを行った。

 中堅企業のA社だが、いろいろと事前に自ら問題点を提示してきただけに、実際に行ってみると、それほどひどくもなかったように感じた。私がいままで経験してきたひどいケースといえば、年間2桁の仲裁・訴訟事件、社内不正、随所に見られる規律違反・・・。しかし、ここA社は、平和だ。

34815_2宿泊先、福州開発区にある宮殿のような海上明珠ホテル

 「いろいろ、不満もあるが、A社は労働環境もまずまずで、何といっても雇用の維持、解雇しないという方針で大きな安心につながっている。どこの会社に行っても、不満は出るだろうから、総合的に考えてA社が良かったので、働いている」

 従業員ヒアリングのフィードバック。若干のお世辞があるかもしれないが、うそをついているようには見えなかった。一連の問題点は、程度の軽重があるものの、どこの企業にも存在している。日系企業は総じて労働生産性が高いとはいえない。すると、メリハリのある考課・賃金制度がなければ、必ず若干の緩みは出てくる。

 むしろ、A社の経営陣が問題を重く見ていることは評価に値する。私が現在手がけている案件の9割近くは、年商数千億円の上場企業である。中小企業はいままで数件あったが、いずれも最終的に全面的な制度刷新には至っていない。一つ、経営者の意識にもかかわっているが、もう一つ、予算の問題も大きい。人事制度は急激に変えると、過度の衝撃で経営基盤を揺るがしかねないので、1年や2年と長い期間をかけてグツグツとじっくり煮詰めていく。すると、コンサルタントの人件費はかかってくる。大企業では、人事専門家が配置されていることも多く、意思疎通は幾分容易で、逆に阿吽の呼吸ですいすいと作業を進める場面が多い。中小企業になると、人的資源が限られている一方、制度構築の中身は大企業とさほど変わらないため、コンサルタントに大きな負担がのしかかってくる。だから、中小企業では、コンサルティングフィーを安くしようなどとんでもない。そうした状況のなか、どうしても、中小企業顧客のウエイトが低下しがちだ。

34815_4福州の夕日、北京へ向かう

 かといって、中小企業にノンタッチというわけではない。経営者の意識を確認し、改革に大きな熱意を持っている経営者であれば、何とかあの手この手使って手伝っていきたい。

 福州A社の経営陣の問題意識には、脱帽だ。勉強にも非常に熱心で、必ずセミナーがあるたびにわざわざ上海に飛んでくる。私としては、何とか自分の力が及ぶ限り、手伝っていきたいとこう考えたのである。

 ということで、1泊2日の作業を終え、17日夕方福州を飛び立って、北京へ向かった。