李白と万葉集、中秋明月雑感

 中秋節といえば、李白の「静夜思」を思い出さずにいられない。

 牀前明月光,(牀前月光を看る)
 疑是地上霜。(疑うらくは是れ地上の霜かと)
 挙頭望明月,(頭を挙げて明月を望み)
 低頭思故郷。(頭を低れて故郷を思う)

44228_2上海の明月もなかなか美しい(9月23日20時撮影)

 大変美しい漢詩だが、同じ詩に、「明月」と「頭」が2回ずつ出ているところ、どうもすっきりしない。「挙頭望明月」と違うバージョンもあるようだ――「挙頭望山月」。それにしても、「挙頭」と「低頭」、「望」と「思」、「山月」と「故郷」がそれぞれ「対」(ペア)になっている対句であるところ、同じ「頭」よりも、たとえば、「挙頭」と「俯首」のペアにした方がいいのではないかと、素人の無知で恐縮ながらも思ったりする(ご容赦を)。

 中秋の満月は、一年の中で最も美しいといわれている。しかし、一日しかないのが実に寂しい。

 「世のなかは空しきものとあらむとぞ この照る月は満ち欠けしける」(万葉集)

 世は無常である。一日しかない中秋の明月だからこそ、貴重であり、そのために一家団欒でそのひと時を楽しむのである。祝杯を挙げるのもよいが、月餅の食べすぎにはくれぐれも要注意。