「悪」を伸ばさないで、「善」を潰さないで!

 「穏便に収める」

 日本人は総じてトラブルの収束を急ぐ傾向がある。これは往々にして、中国の人事労務現場では致命傷となる。

 早期収束への期待感は、ずばり交渉上の弱みとして捉われるのである。それに漬け込んで、理不尽な要求を突きつけてくる従業員との交渉では、会社は断然不利な立場に置かれる。

 先日、相談を受けたケースだが、従業員が自己都合で会社を辞めるのに、法外な補償金を会社に求め、一族が工場の門を取り囲んで経営妨害まで行った末、会社が補償額を提示しようとした。とんでもないことだ。

 交渉に応じない。交渉する場さえ存在しない。――私のアドバイスである。

 「悪」への利益供与は、「善」を踏みにじることだ。「悪」が得することは、「善」が損することだ。このままでは、「善」が萎縮し、やがて「善」が消え、「善」が「悪」へと変質する。

 人間として、正しいこととは何か。こんなときだからこそ、原則原理を考える必要があるだろう。

 法律を守る。そして、「法外の措置」を取らない。毅然とした姿勢で立ち向かう。「悪」の抑止は、「善」を守る第一歩である。

 「善」を潰さないで!