何でルール守らないの?根底の原因はここにある

 ある契約を打ち切るので、総務にアクションを指示した。しばらくして、報告が来て、「はい、契約解除手続終了しました」。「先方からの解除確認書を見せてください」と私がいうと、「そんなものはありませんが、しっかり解除しましたので、没問題です」。「じゃ、こちらから送った解約通知書を見せてください」と求めると、「それもありません。Eメールで先方の担当者としっかり確認済みです」・・・。

 簡単な契約解除なので、担当者が自分の判断で「略式処理」したようだ。当社の規程では、契約締結、契約変更、契約終了・解除は、すべて正式文書を作り、弁護士の審査と確認を経て、EMSで相手方に送達することになっている。

 中国の場合、このようなガチガチの欧米流の「手続」よりも、担当者同士の顔が優先される。これは、民間に起源する「人治」の原点。「法治」がなかなか定着できない原点でもある。

 先方X社の担当者Aさんが、本件を了解した。では、AさんがX社を辞めた場合、引き継いだBさんも本件を了解しているのか?「私はそんなことを聞いていません」と、Bさんが一点張りの場合、どうするの?「した」「してない」の水掛け論に突入するのが目に見えている。本来ならば、X社との議論だったところが、いつの間にか、AさんやBさんの問題になってしまう。そうならないために、書面の文書(証拠)が必要であって、何よりもそれがものを言うわけだ。

 中国では、人脈の威力が大きい。その反面、人脈の破壊力も大きい。人脈頼みの中国ビジネスは必ず行き詰ったり、大きなトラブルに遭ったりする。

 中国では、「ルールを守らない」ということがよく言われるが、それが、当事者本人がルールを破りたくて破ったわけではなく、往々にして悪気がまったくなく、ただ、自分の判断をはさんで「ルールの合理化」をしただけのケースが多い。いわゆる法律やルールの功利主義的運用である。

 自社内の教育もしっかりしなければと猛省している今このごろだ。