2018年5月。居住地のマレーシア・クアラルンプールからは、乗継ぎの時間も入れると22時間。やっと地球のほぼ裏側にたどり着く。今回の南部アフリカの視察先は、ナミビア、ジンバブエ、ボツワナ、そしてザンビアの4か国。目的の1つはアフリカ進出の先発組である中国企業関連の調査である。
ジンバブエ側のビクトリアの滝を見学したあと、そのまま徒歩北上し、ジンバブエとザンビアの国境となるビクトリアフォールズ橋を目指す。橋の中央には「あなたは今、ザンビアへ入る(You are now entering Zambia)」の標識が立てられている。足もとの白線を一歩超えると、ここからはもうザンビア共和国である。
ザンビアには多くの中国企業が進出し、多くの中国人が在住している。記憶に新しいが、昨年(2017年)11月、ザンビアでは中国企業が銃などで武装したグループに襲撃され、1人が死亡した事件があった。それこそ犠牲者が出ていないだけに表面化しなかった事件は、ほかにも多数あったわけだが、なぜ中国企業や中国人が現地で狙われたのか、私は強く興味をもっていた。
考えられる最大の理由は、利害関係の衝突にほかならない。そうであれば、中国企業がザンビアをも含むアフリカに相当浸透していることはほぼ間違いないだろう。
日本のメディア一般では、中国がアフリカから資源を収奪しているとかそうした情報が流れている。確かに中国とアフリカの結び付きといえば、資源を抜きにして語れない。ザンビアについても、中国は銅や石炭、マンガンの埋蔵に関しては利権を確保してきた。そうした部分よりも私はより、実務レベルにおける中国企業の動きに大きな関心と興味をもっていた。
アフリカ現地に入ってみると、政府関連の資源取引よりも、中国民間企業ベースの浸透が凄まじいことを思い知らされた。何よりも運転手やガイドなどの業種関係者がまさに外国人に接する第一線に立つだけに、生々しい情報を提供してくれるのだ。
ザンビアに限って言えば、中国人・中国企業のビジネスはほとんどレストラン経営、ホテル経営、貿易、建設と農業分野に集中している。注目すべきはこれらの中国人はいずれも北京や上海などの大都市ではなく、江西省や四川省などの地方出身の人間であったことだ。特に江西省建工社は早い段階でザンビアの首都ルサカの建設業界に進出した国有企業として知られており、それについてきた多くの江西省出身者がザンビアに定住するようになった。
中国流に言ってみれば、中国国内の「二流」以下の会社や地方出身者が欧米や東南アジアに無縁ながらも、辺鄙なアフリカに追いやられたような感が否めない。しかし、そのなかからサクセスストーリーを見事に紡いだ者も多い。ザンビア現地で一財産を築きあげ、いまや広大な土地を所有し、プール付きの豪邸に住む中国人もいる。