一時期インバウンドで中国人客の「爆旅」で騒ぐ日本の旅行業界だったが、嬉しい悲鳴を挙げる余裕はなかった。お金がなかなか日本に落ちないからだ。
2017年8月27日付「毎日新聞」記事の一部を抜粋引用する。
「旅行熱が続く中国からの観光客を当て込んだ『中国式白タク』が、成田空港や関西国際空港など日本各地の空港で横行している。『中国人による送迎・ガイド』をうたい、中国の業者に登録した在日中国人が自家用車を運転。集客から支払いまでスマートフォン上で完結するため、取り締まりを免れるケースが大半だ。急速なキャッシュレス化が進む中国。日本側の対応が追いついていないのが現状だ」
「中国式白タクは、運営する中国業者のスマホアプリで客が出発地と目的地、利用時刻を選べば、業者から日本にいる運転手に手配が届く仕組みだ。運転手が中国系のため、客は同胞意識と言葉が通じる安心感を抱く」
「関西方面を旅行した際に利用した男性によると、飛行機が関西空港へ着陸すると、スマホに中国語で『あなたの運転手です。外でお待ちしています』というメッセージが届いた。指定された送迎用エリアでは、黒いワンボックス車の前でスーツ姿の男性が出迎えてくれた。空港から新大阪駅までタクシーでは1万8000円程度かかるが、白タクなら630元(約1万円)だ」 (以上引用)
はっきりいって違法営業だ。ただ証拠はなかなか見つからない。警察が職務質問しても、「友人を車に乗せている」というだけで、それ以上追及することができない。売上という金銭的やり取りが日本で発生しないだけに、摘発は至難の業。
中国人旅行客といえば、団体ツアーでぞろぞろと旗振りのガイドにくっ付いて土産物店巡り。という伝統的な形態が崩れてきた。個人旅行の主流化によって、日本の大手旅行会社が介入できる場面はどんどん減る。その代わりに元締めとなる中国側の集客業者が絶大な主導権を握る。彼らは仲介料の高い日本の業者よりも、下請けコストの安い在日中国人を使った方がより多くの利益が得られる。
正規業者を使わないリスクをお客はどう受け止めるのか。その辺も日本人消費者の感覚と随分違う部分がある。なかに、むしろ進んで非正規の現地中国人ドライバーやガイドを使いたがるお客が多いのではないだろうか。
料金の問題、言語の問題、感性の問題。どれをとっても、現地中国人のほうが正規の日本業者より競争力を有している。逆にいえば、この分野では日本の旅行会社は太刀打ちできない。自国の領土で旅行を楽しむ外国人旅行客を眺めながらも、売上げが落ちてくれないのである。
善悪を別として、こういうのも華人ビジネスの一環である。