虚業よりも実業!習近平の喝破で中国産業政策は急転換へ

 アリババ、騰訊(テンセント)、滴滴出行(ディディ)……。中国当局がIT企業への締め付けをどんどん強めている。中国の経済成長を支えてきた中核産業を自らぶち壊すとは、さぞかし信じられないこと、いや自殺行為ともいえなくはない。

 しかし、大方の人は、表しか見ていない。習近平政権は、ある意味で正しい政治決断を行ったのだと、私は思う。

 ネットビジネスでの独占事業の排除やビッグデータの民営企業への過剰な集中の回避が、規制強化の理由ではあるが、すべてではない。中国は産業構造の転換が主目的だ。

 虚業から実業への転換。ネット産業から製造業への回帰。

 「錦上添花・雪中送炭」という中国の故事成語がある。華やかで楽しい場にさらに花を添えるより、雪に見舞われ苦しいときに、暖を取るための炭を送ることこそ、大切だということである。ネットビジネスが前者であり、伝統的製造業は後者にあたる。

 ソーシャルメディアがあって、国民がおしゃべりに熱中する分には、リアルな価値が生まれない。時間の浪費ですらある。そんなものがなくても、誰もが死にはしない。むしろ政府は言論統制に莫大なコストを投入せずにすむという経済的合理性がある。

 外資が中国から撤退し、中国の外で別途サプライチェーンを作り上げた時点で、それこそ死活問題だ。製造業が生命線である。半導体や電気自動車用バッテリー、商業用航空機をはじめとする先端技術を入手し、中国の製造大国としての競争力を確保することこそが最優先課題である。

 私が指摘してきたように、この世界、特に先進国では、第三次産業の供給が過剰だ。この現実をコロナが浮き彫りにしてくれた。ポストコロナの時代に、大幅委縮し、集約された第三次産業から資源が第二次産業へと移動する。日米などの先進国では早晩、製造業の本国回帰、オンショア化が始まる。つまり、従来型のグローバリズムの終焉である。

 中国にとって、これは青天の霹靂だ。今すぐにでも、将来に備えた産業構造の改革に着手しなければならない。そうした意味で、習近平の判断は正しい。

 さらに、オンラインゲームを「精神アヘン」と批判するキャンペーンも始まった。IT業界への締め付けが強まる中、急成長を続けるゲーム業界が次の統制対象になったようだ。

 経済参考報は8月3日、人気ゲームを例に挙げ、「2020年、中国の児童・青少年の約半数は視力が低下し、オンラインゲームは未成年者に悪影響を及ぼしている。人々はしばしば、『精神的アヘン』『電子ドラッグ』といった言葉でオンラインゲームを表現している」との批判記事を掲載した。同メディアは記事掲載後まもなくして、「アヘン」や「電子ドラッグ」などの過激な描写を削除したが、記事を再配信した。

 「アヘン」や「電子ドラッグ」。まさにその通りだ。何も中国に限った話ではない。日本も同じことが言える。非生産的で健康に有害なゲームに興じて、無為かつ無駄な時間を過ごす。とんでもないことだ。自由主義が堕落を助長しながらも、規制する手段は皆無。習近平が喝破したところ、ある意味で拍手を送りたい。

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