<雑論>もしトラ / 被害者特権 / 日中関係の本質

● もしトラ

 トランプにあるのは、民主の価値でなく、取引の価格だ。民主主義が手段、経済的利益が目的であるからだ。トランプは単純明快だ。

 トランプが復活した場合、「もしトラ」のシナリオを描いてみたい。中国による台湾統一に米国は介入しないことを条件に、トランプは中国との交渉に乗り出すだろう。米中貿易において最大の利益を引き出すと。一方、中国にとってみれば、まずは台湾統一を手にすることだ。米中貿易については後から再交渉も決して不可能ではないからだ。

 台湾にとっては、どうだろうか。大統領になったトランプが台湾を助けないことを明言した時点で、台湾国内はいよいよ真剣に「和平統一」(対中降伏)を選択肢として議論せざるを得なくなる。米国支援をなくして、台湾陥落は火を見るより明らかだからだ。戦争で潰されるよりは早い段階で対中交渉に出たほうが有利だ。民進党頼清徳政権は揺れ始め、大きな姿勢転換を見せなければ、台湾国内に反政府運動が始まるだろう。台湾統一は、トランプ任期内に、2028年までに実現する。

 日本と韓国はどうなるか。トランプは2016年、ニューヨーク・タイムズのインタビューで、日本の核武装に反対しない考えを語っていた。「米国が弱体化を続けるなら、日本や韓国は遅かれ早かれ核武装に向かうだろう。それは時間の問題だ」という立場である。

 トランプは日本に核保有を許す。第一列島線を放棄してでも、日本は核保有国になったほうが断然有利。自分の安全は自分で守る。では、日韓は核武装に向かうのだろうか。

 まず、韓国は核武装を終える前に北朝鮮の攻撃を受ける可能性がある。2023年末に金正恩はすでに韓国を「同族」ではなく、「第一の敵国」とし、ロシアの軍事的支援もあって対韓戦争を辞さない姿勢を見せている。次に日本。米国が第一列島線の「運営権」を日本に譲るだろう。日本は米国抜きに独自に核武装をしたうえで、中国と対峙するのか。とりわけ憲法改正や抜本的な方向転換を含めて、国内政治の難局を乗り越えられるかどうかにかかっている。

● 被害者特権

 この世界は、「被害者特権」というものが存在する。被害者特権階級というピラミッドの頂点に立つのは、ユダヤ人。この人種が受けた迫害は史上最大級で、その見返りとしてはユダヤ人は、最大級の特権を手に入れた。ユダヤ人に対する批判は場合によっては直ちにナチスと同一視されるから、怖い。

 直感的だが、ユダヤ人口の8割以上が左翼である。ユダヤの知識人が大学で教鞭を取り、ユダヤ人の富裕層は長年にわたって大学やNGO(非政府組織)に惜しみなく資金を提供してきた。ユダヤ人が世界を牛耳ることができたのは、彼らの被害物語に基づく。左翼のベースでもある。

 被害者ピラミッドは、黒人のブラック・ライブズ・マター(BLM)やムスリム、LGBTQI+(性的マイノリティ)、フェミニズムなどから構成されており、ヒエラルキーは常に時流で調整されている。必要に応じてウイグル人のような特定の被害者も加わったりする。ただ、パレスチナ人だけはユダヤ人との対立から、不幸にも本格的な被害者になれない。

 米国左派の理論は、犠牲者理論であり、つまり「DEI(Diversity=多様性、Equity=公正性、Inclusion=包括性)」である。最近企業組織のなかにも導入されるケースが増えている。ある意味で企業の左傾化と言っても過言ではない。

● 日中関係の本質

 歴史的に日本が中国を侵略した。これを経済学の言葉に訳すと、工業が農業を侵略したということになる。当たり前だ。産業革命で前進した国と乗り遅れた国の運命の分かれ目だった。しかし、中国は工業の舞台に移って日本を制したという後続の展開は、日本人にとって耐え難い事実だ。

 日本人は農耕民族の出自だったから、「脱亜入欧」という発想・文脈があった。だが、工業の舞台で中国に追い越されてみると、コンプレックスが生まれる。「入欧従米」の日本人は、アングロサクソン社会で3等の地位を甘受しても、黄色人種・アジアでのトップ地位を譲るわけにはいくまい。

 ゆえに、米国以上に日本は反中なのだ。このメンタル的な葛藤はいずれ是正されるだろうが、少し時間とコスト(犠牲)がかかる。中華儒教文化に対する日本文化の同根性は紛れもない事実で、脱却できない。そこから新たな文脈が生まれるだろう。米国が中国に屈服すれば、すぐにその文脈が表面化し、日中友好の時代に突入する。

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