ハワイ(7)~人生は公平ではない。それに慣れよ

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 ラナイ島の休暇で、ビル・ゲイツ氏の結婚式の話が出たが、もう少しビル・ゲイツ氏の話をしよう。

72896_1ハワイの空と星条旗

 私がコンサル現場でよく使うビル・ゲイツ氏の格言は二つある――「成功は、最低の教師だ」、そして、

 「人生は公平ではない。それに慣れよ」。

 「日本ではこうだ」「いままではこうやってきた」、今だに慣習や過去の成功体験にしがみつく日本人経営者がいる(本社を意識しているケースも少なくない)。成功体験なんて、ただの邪魔者に過ぎない。私が常に提唱しているのは、「ゼロベース思考」だ。

72896_272896b_2ラナイ島の青い空と海

 そして、公平の話。公平の世の中、どこにあるのか。日本社会では、基本的に「平等」や「平均」を「善」としているのだが、私はコンサル現場では、「不公平を創り出す」ことを宣言し、実践している。均等の機会から生まれる不公平な結果は、競争社会の「善」である。いや、どうしても「悪」と考えるのなら、「必要悪」といっていいだろう。ただ、ドライに脱落者を振り落とすのではなく、敗者復活のチャンスを与える、条件付きの救済をするというのが私の理念だ。三回もチャンスを与えてそれでもダメなら、申し訳ないけれど、クビだ。会社は営利機関であり、優秀な社員にこそ不公平をもたらさないためにも、資源の無駄遣いは断じてできない。

72896_372896b_3ラナイ島の花々

 ビル・ゲイツ氏は世界一(2011年現在、番付では二番)の金持ち、現在の資産残高は4兆6000億円規模。私の1時間の相談料は2500元だが、彼はわずか2秒で稼いでしまう計算だ。1800倍の収入格差だ。これは公平なのか。機会均等の競争社会では、まったく公平だと思う。彼の成功に何を学ぶべきか、謙虚に勉強しなければならない。

 ビル・ゲイツ氏はゲイツ慈善財団を作り、現在の資産残高はロックフェラー財団や李嘉誠基金を凌ぎ、3兆円を超えている。社会的名声を高めるためにやったんだという批判の声もあるが、確かに結果的にそういう部分もあるだろう。が、世界の貧困解消に少しでも役に立っているのであれば、それでいいのではないか。

72896_472896b_4ラナイ島の花々

 人生は公平ではない。だが、結果としての不公平という「必要悪」を是正するために、どこまで貢献できるかで真価が問われる。私より1800倍も稼いでいる世界一の大金持ちだからこそできることではない。どんな人でも多少はできるはずだ。

 先日、ある集まりの食事会では、参加者の抱負と夢を語る時間があったので、私は自分の抱負をこう語った。「私の夢は遺産を作ることだ。夫婦が死んだ後に慈善事業に回せるまとまった遺産をだ」。

 会社経営も同じだ。脱落者を出さないようにいわゆる公平な結果を求めるのではなく、優秀な社員にたっぷりとご褒美を与え、そして脱落者の救済ができる利益を作り出すことだ。

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