スモール・アンド・デリシャス!美食宿の魅力はここにある

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77521_1「べにや無何有」で感じる食の喜び

 温泉旅館や温泉街の飯がまずい。こういった状況は、ここ数年少し改善したように思える。不味い飯しか出せない旅館で、素泊まりパッケージに力を入れて頑張るところも増えてきている。

77521_277521b_2「べにや無何有」の朝食風景

 大型旅館は、物理的に料理に情熱を傾注する余裕がない。どんな一流な宿でも、宴会となると、やはり食事が「芸術品」から「工業製品化」するものだ。料理人のパッションを感じられなくなる。肉や魚、野菜が食材の次元にとどまり、単なる味付けされた動物や植物の死体になるほど寂しいことはない。

77521_3春一番らしき突風襲来直前の青空と桜、山代温泉にて

 私も四十代に入ってから、ホテルや旅館、レストランに関して、とにかく小規模にこだわり始めた。単純に物理的な問題だ。良い料理ができるかできないかは、数にも重要な関係がある。数部屋あるいは十数部屋しかない旅館だと、満室でも客数が20~30名、平日を狙っていけば客数1桁のときもある。

77521_477521b_4山代温泉「寿司平八」の生鯖と鯖のへしこ寿司

 今回泊まった「べにや無何有」も、全17室の小さな旅館だ。2泊ともいずれも総客数が十数名しかいない。2回の夕食はまったく異なる献立を用意してくれた。昼間は、食事が出ないので、温泉街を散策して誰もいない「平八」という寿司屋ののれんをくぐったが、突風襲来で店を閉めようとした主人が喜んでくれた・・・

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