世界遺産 vs ミシュラン、過去・現在と将来の関係

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 4月4日、念願の世界文化遺産・白川郷へ。

77565_14月4日、白銀世界の白川郷

 桜が咲き始める山代温泉から車で1時間ほど走ると、そこは、一面白銀の世界。4月上旬といえば、桜前線しか頭にない私は思わず嬉しい悲鳴を上げる。パンフレットに載っているあの雪の白川郷は、そのまま目の前に広がっている。

77565_2白川郷、雪中の合掌造り集落

 世界文化遺産「白川郷・五箇山合掌造り集落」は1995年12月、白川郷と菅沼、相倉(五箇山)の3集落が世界文化遺産に登録された。白川郷を訪れる観光客は、登録前で約60万人程度だったものが、世界遺産に登録される翌年から100万人、そして2001年に入ると150万人を突破した。

 人口わずか2000人程度の小さな村、これだけ観光客を受け入れるキャパをもっているのだろうか。まず駐車場の問題、廃棄物の問題、それから、何よりも住民の暮らしが乱される問題。考えたら、問題の山積だ。

77565_3昼食へ

 世界遺産の登録はいまや、「世界名勝観光地」あるいは「世界級テーマパーク」の格付けを得るような存在になってきている。登録すれば、観光業が爆発的に成長し、地元にはお金がどんどん落ちる。村興しや経済活性化にはなったものの、景観や環境ないし文化遺産そのものの破壊が確実に進んでいる。いよいよ、本末転倒ではないかと、世界遺産登録の真の意義が議論されるようになった。

 世界遺産の登録は、毎年審査と選抜を繰り返すミシュランと違って、一度登録されると、よほどのことがない限り、抹消されることはない。そこが大きな問題だ。世界遺産登録の流動化がなくてはならない。毎年、評価を行うべきだ。保全の度合によって評価し、一定基準を下回ったら、警告、さらに悪化したら、登録の抹消。

77565_4至福の一献

 人事制度も同じだ。ミシュラン型の評価制度になっているのか?それとも世界遺産型なのか?世界遺産は過去あるいは現在の栄光であって確かに輝かしいものだが、いつまで保全できるのか、そこが真価問われるところである。

 世の中、東西を問わず、既得権益は悪中の最悪である。既得権益にしがみつけば、発展が停滞し、成長が止まり、やがて衰退の道をたどる。世界遺産は素晴らしいが、それが存在前提の話だ。

 そして、遺産で金利を生ませる前に、まず相続税をしっかり払わなければならないのである。権利と義務の関係だ。

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