私は大学理系出身で、後日法学と経営に転向した人間である。
しかし、還暦を迎えた自分はいまや、もう一度エンジニアの世界に戻ろうとしている。私が考案した世界唯一の3階建®人事制度を、AI SaaSプラットフォームとして具現化するための開発準備に取り掛かっているからである。
制度設計者・思想家として、単に開発をエンジニアに丸投げしたくはない。自分自身もシステム開発のエンジニアリングの大枠を把握し、制度設計と技術開発のあいだを自由に往還できるようにしたいと考えている。
そのため、毎日多くの時間をAI技術とシステム開発の学習に費やしていると、ある日、思いがけない発見をした。Aという仕組みを作ろうとしたところ、技術的な拡張性の原理が見えてきて、気が付けばBもCもDもできるのではないかという発想が次々と湧き上がってきたのである。
この現象は「再帰的拡張」と呼ばれる創造のメカニズムである。人間が何かを構築しようとするとき、その内部には普遍化可能な抽象構造が潜んでいる。設計者がAを作る過程で、その背後の原理を掴み取った瞬間、Aは単なる機能ではなく、BやCをも生み出す「原理生成装置」へと変貌する。すなわち、設計者は対象を作るのではなく、対象を生み出す法則そのものを発見するに至る。
このとき思考は、具体から抽象へ、抽象から具体へと往復運動を始める。
構築と超越のあいだで秩序を作り、同時にそれを壊し続ける。これこそが真の創造であり、制度設計者が哲学者になり、哲学者がエンジニアになる瞬間である。AIやシステム開発の文脈においても同じ現象が見られる。モジュールAを作ろうとすれば、その下層にAPIやデータ構造の普遍的原理が現れ、結果として他のモジュールBやCが自然に接続可能となる。設計の局所が、全体のアーキテクチャを生成し始めるのだ。
3階建®制度もまた、そのような再帰的構造を持つ。
T1・T2・T3という三層は、給与制度の枠を超え、社会契約・分配原理・ガバナンス構造にまで拡張し得る。Aを構想したときにB・C・Dが見えてくるのは、偶然ではなく必然である。制度の中に潜む普遍的アルゴリズムが、思想と技術の双方を自己展開させているのである。
エンジニアが「拡張性」と呼ぶものを、思想家は「普遍性」と呼ぶ。両者が交差する地点にこそ、真のイノベーションが生まれる。制度設計とエンジニアリングを往還する思考は、単なる開発のプロセスではなく、創造の根源的な形式である。私は今、その再帰の渦中に立ち、再び理系の精神を呼び覚ましつつあるのだ。





