TPP合意、新冷戦時代の二大陣営と政治あっての経済

 TPP大筋合意。これは素晴らしい。安倍自民党政権が安保法制に続き、一大仕事をやり遂げてくれた。

 TPPは、「環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)」の略称として、まさに省略された「経済」を超え、政治的な意味合いがはるかに大きい。

 経済と政治は不可分であると、私は一貫して主張している。今回のTPPから韓国が脱落したのも、中国に対する配慮という政治的要素が大きく影響したからであろう。

 これで、「新冷戦時代」における二大陣営の骨組みがほぼ固まった。将来的に通商や経済関係を超えて、外交や軍事における広範な協力ないし準同盟、あるいは同盟関係の結成もあり得るだろう。

 冷戦はある意味で、熱戦を抑制する役割を果たすだけに、重要な存在である。今後の世界は、一国帝国主義がもはや成立しにくいだろうから、その代替役として相互けん制、自己抑制的な結盟が欠かせない。

 注目したいのは、韓国と台湾だ。

 まずは韓国。潘基文氏が17年の次期韓国大統領に就任した場合、二通りの展開が考えられる。

 一つは潘氏が豹変して朴路線を否定し、中国と疎遠し、米韓同盟の強化に乗り出し、日本に再接近する展開。そこでTPPへの後続加盟もあり得るだろう。その前提は中国経済の悪化が進み、中国パワーが低下し、韓中蜜月時代に異変が生じた場合だ。

 もう一つ、中国は相変わらず勢いをもち、米国の不調が顕著になり、韓中疎遠よりも中国への臣服・追随が既定国策として固まった場合、潘氏は国連の延長で、韓国の「中立国家化」政策を打ち出し、米国疎遠に切り替える。名目上は「中立」といっても実質的に韓中同盟、あるいは準同盟である。その場合は、日本にとって完全に韓国を切り捨て、「日米韓」から「日米台」への切り替えしか道がない。

 次は台湾。日本が「棄韓連台」という政策転換に踏み切った場合、台湾の存在が大きく変わってくる。明日からの台湾民進党・蔡英文氏の訪日、同行案内役を務めるのは、安倍首相の実弟、岸信夫衆院議員である。 そこでどのような安倍メッセージが伝えられるのだろうか。

 日本の安保法の成立も、TPPの合意も、終盤かなりの慌しさが見られ、何か動き出すような気配を感じずにいられない。国際政治・情勢の変化からグローバル化する企業の経営にどのような影響が与えられるのか、予断を許さない。