自尊心擽る「激将法」、戦意煽る二者択一からの発展的延長

 面白い書き込みがあった。一昨日マナーの悪いセミナー参加者を精査して実名付きで公表するという私の投稿に、「男らしい。気に入らない企業は片っ端から公表してください。尻すぼみにならないようにお願いします。やるやる詐欺はナシで」という書き込みがあった。

 ふと思い付くのは、「三国志」の「請将須行激将法」。将軍を戦場に駆り立てるために、もっとも有効な手法は戦意を煽ることだ。それが正と反両面の刺激を与え、相手の自尊心をくすぐる「激将法」である。戦えば「英雄」、逃げれば「クズ」。これは特に他人からの評価を気にする人によく効くのである。

 たとえば、マナー違反者の公開基準を一つの例としても、事実の確認、公表による公益性の判断といった要素をクリアする必要がある。単なる「男らしさ」を追求し、英雄気取ってやるべきことではない。さらに、自分が「気に入らない企業」だから公表して批判するとなると、それは自分の原理原則に反する。

 話を戻す。とはいっても、「激将法」は行動心理学の一研究対象分野(テーマ)であって、実は私は人事管理コンサルの現場でもよく使っている。ただ、あることを修正してから使うようにしている――。二者択一の回避と思考の多元化。

 「英雄」か「クズ」、これが好例である。「激将法」は二項対立、二者択一の典型的な論法である。この極めて対立的な枠組みを突破し、諸概念の定義の再確認から始め、論理的思考から理性の結実、第3あるいは第4の選択肢を生ませる。

 昨今日本国内の政治を見ても、二項対立的な論法が溢れている。二者択一を迫る者、二者択一を迫られる者。複雑な世界の単純な対極論化それ自体の修正が喫緊の課題である。いや日本だけではない、アメリカの選挙を見てもいささかその様相を呈しているように思える。