私は一度死んだ人間だ、11年前のあの事件を思う出す日

 11年前の今日、2014年3月8日。私はマレーシア航空の北京行きMH370便から、上海行きのMH386便に変更し、乗り込んだ。

2014年3月8日上海行便の搭乗券が一生の記念になる

 翌朝、上海に到着した私は、多くのメッセージを受け取った。それを見て初めて、MH370便が消息を絶ったことを知った。血の気が引き、言葉を失った。もし予定通り北京へ向かっていたら——そう考えたとき、自分が生きていることが奇跡に思えた。

 航空便変更の決断は偶然ではなく、ある種の「導き」だったのかもしれない。北京の顧客企業から「4月1日の人事異動で現法トップの日本人交替があるため、打ち合わせを4月以降に延期してほしい」というリクエストを受け、私は北京便から上海便へと出張の予定を変更した。

 その夜、MH370便は私が搭乗する上海便より40分ほど早く出発した。搭乗アナウンスが流れるのを聞きながら、私はゲート付近でその光景を眺めていた。「本来なら私もこの便に乗るはずだったのに……」と思いながら、乗客たちが機内へと吸い込まれていくのを見送った。

 「立花さんは強運の持ち主だ」
 「神に選ばれた人間だ」
 「特別な使命を持っている」

 周囲の人々は、そう口々に言った。しかし、それは単なる偶然なのか、それとも本当に意味があるのか。私は次第に、心の奥底に湧き上がる声に気づくようになった。それは、神の声だった。この日を境に、私の人生は大きく変わった。

 一度死んだ人間にとって、もう恐れるものなどない。周囲の目も、世間の評価も、どうでもよくなった。私はますます物事をまっすぐに語るようになり、遠慮なく真実と本質を発信するようになった。その結果、友人や顧客を失うこともあった。だが、それもまた、どうでもよかった。むしろ、神が私に与えた使命とは、偽りのない真実と本質を世に示し、人々に伝えていくことなのではないか——そう悟ったのだ。

 「私は一度死んだ人間だ」

 だからこそ、これからも感謝の気持ちを忘れずに、誠実に、力強く生きていこう。

 MH370便に搭乗する人々を見送った私は、長く罪悪感を抱えていた。たまたまの出来事により、40分後の便へと予定を変更したことで死を免れた。自分だけが生き残ったこの心理状態は、「サバイバーズ・ギルト」と呼ばれる。

 偶発的な災害や事故から奇跡的に生還した者が、「周囲の人々が亡くなったのに、自分だけが助かった」という事実に対して抱く罪悪感である。私はその罪悪感の中で、自らが何らかの形で償わなければならないという思いに至った。神への債務の返済である。

 「幸運」や「強運」といった恵みは、神からの恩恵であると同時に、神に対する債務でもある。それは、いずれ返済しなければならないものだ。災害から奇跡的に生還した者は、「神に選ばれた者」として、「与えられた使命」を全うすることを求められる。それはすなわち、神の下僕として生き、債務を返済していくことにほかならない。トランプもまさに、そのように行動している。

 時はラマダンの最中。私は特定の信仰を持たないが、周囲のムスリムとともに自省し、魂の浄化に努めている。

 MH370便の乗客乗員のご冥福を、心からお祈り申し上げます。

タグ: