ワーグナーの「マイスタージンガー」を聴くたびに、勇気づけられる。
夢語りの空虚さも、郷愁的な空虚さもない。ただひたすら勇猛な前進のみ、その単一価値の高貴さを謳歌する。たとえニヒリズムであっても、いやニヒリズムだからこそ、能動的な作為が可能となる。可能にする。
無から有を創り出す。生の価値、ただそれだけ単純な原理だ。弱は決して恥ではない。弱の強化、力への意志、際限なく力の増殖こそが強き美であり、生存と進化の極限に挑む。
神は存在するならば、自らの中に生きている唯一神である。恐怖心がこの神をサタンへと変身させていく。その異変を抑えるのが勇気、勇気、そして勇気。自分の敵は自分である。
自分の神には祈るのではなく、その神を御し、支配し、司るのだ。そして自分の神がついに女神の微笑みを見せる。さらば、サタンよ。
マイスタージンガー!