福岡空港保安警備上のリスク(2)~テロ対策の重大な機能障害

<前回>

2.保安警備機能の実効性不全

 受託手荷物の万全な保安検査レベルを確保するには、検査機器のチェックインカウンター内部への移設が急務である。それまでの間は、検査済み荷物が再度乗客の手に渡った時点から、チェックイン完了までの間の監視体制要員の投入は欠かせない。

 しかしながら、NISIK社の運営現状では、異なるチェックインカウンターの保安員間の相互応援協力体制ができていない。閉鎖中カウンターの保安員らが単に暇で談笑しているだけだ。

 私が提示した質問・疑問に対して、保安員Bさんは「すみませんが、このような体制になっていますので、ご理解ください」との一点張りだった。さらに、現状を確認用の写真に収めるべく、私がカメラを向けた時点で、保安員Bさんは、「ここは写真撮影禁止です」と制止に乗り出した。

 場所は、出発ロビーの一般エリアである(保安検査場外)。「写真撮影禁止」の標識はどこにも掲示されていない。念のため私は確認する。「写真撮影禁止標識はどこに掲載されているのか、それと禁止を裏付ける法律根拠も教えてください」

 保安B 「私は写真がダメだと言っているんでしょう」
 私 「ですから、その法律根拠を示してください」
 保安B 「テロ防止上、写真撮影禁止です」
 私 「テロ防止はわかります。そのための空港保安管理条例といった根拠があるはずですよね。それを見せてください。私はそれに従います」
 保安B 「だから、私が言っているのではないですか。写真はダメです。従わないと、警察を呼びますよ」
 私 「そのほうがいいですね。警察官に確認したほうが分かりやすい。ぜひ、呼んでください。すぐに呼んでください」
 保安B (行動なし)
 私 「警察を呼んでください。待ってますよ」
 保安B (行動なし)
 私 「警察を呼びましたか。早く呼んでください」

 しばらくすると、別の保安員制服姿の人がやってきた。Bさんの上司と自称しているが、氏名を明かさない。Cさんとしよう。

 保安C 「お客様、空港警察交番は、正面を出て右手にあります。何か確認したければ、あちらへ行ってください」
 私 「話がぜんぜん違いますね。あなたの部下のBさんが警察を呼ぶと言いましたから、私が警察をここで待っているのですよ」
 保安C (Bさんに向いて)「君、そう言いましたか?」
 保安B (Cさんを引っ張っていき、こそこそと話を始める)
 
 その後も数回、私から「警察を呼んでください」と押した後、ようやく警察官がやってきた。

 警察D (私に)「パスポートを見せてください」
 私 (パスポートを渡す)
 警察D 「あなたの国籍は?」
 私 (噴き出す直前、堪えて)「パスポートに書いてあるんでしょう」
 警察D 「住所は」
 私 「マレーシアの○○××」
 警察D 「いや、日本国内の住所をください」
 私 「ありません」
 警察D 「何らかの住所があるはずでしょう」
 私 「ありません。ないものはない」
 警察D (パスポートのマレーシア居住ビザを眺めながら)「ここになぜマレーシアの住所が書かれていないんですか」
 私 「それは、マレーシア政府に聞いてください」
 警察D 「住所がないのが困りますね」
 私 「日本人で日本国内に住所がなくて、外国に住んでいる。外国政府発行の公文書類に外国の住所が記載されていない。それだけであなたが困るなら、警察官として、しかも国際空港の警察官として失格でしょう」
 警察D (しばらく黙り込む)「写真撮影の件ですが、NISIK社の保安員の指示に従ってくださいね。次回は撮影しないように守っていただければ、今回はこれで結構です」
 私 「ちょっと待ってください。この件は終わっていません。出発ロビーでの写真撮影禁止に関して、まず禁止標識が見当たりません。それから、法律根拠はどこにあるのか、それを確認したくてあなたに来てもらったのですよ。教えてください」
 警察D 「ですから、NISIK社の保安警備員の指示に従ってくださいと言っているのでしょう」
 私 「その指示の法的根拠を知りたいのです。あなたがプロの警察官ですから、それを知っているのでしょう。教えてください」
 警察D 「言ったじゃないですか。次回撮影しなければ、今回はこれで結構です。あなたも納得したのでしょう」
 私 「いいえ、納得していません。私の質問に答えていただいていませんから、納得できるわけがないじゃないですか。もう一回聞きます。・・・(繰り返し)」
 警察D (黙り込んで、私から離れたところで無線交信を始める、5分ほどで戻ってくる)「あの、何回も繰り返しているのですが、・・・(繰り返し)、それで納得したでしょう」

 ・・・(「納得したでしょう」「納得していない」の繰り返し、平行線を辿る)

 私 「じゃ、質問を一旦変えましょう。出発ロビーでの写真撮影禁止の法的根拠はさておいて、禁止は間違いありませんね」
 警察D 「完全禁止と言っていません。写真撮影の目的と撮影内容によります」
 私 「なるほど、完全禁止ではなく、事情によっての一部規制ですね。その目的は何ですか?」
 警察D 「テロ対策上」
 私 「そうですよね、とっても大事なことですからね。では、私が写真を撮影したかどうか、撮影したとすれば、どういう目的で撮影したか、どのような写真を撮影したか、あなた、それで分かっているのですか。分かっていないでしょう。分かっていないまま、単に『納得しましたね、次回撮影しません』といった上辺の言葉をとって、それで本件を終了とするのですか。テロ対策と仰っているわけですから、あまりにも無責任ではありませんか。テロ対策上、この福岡空港は極めて大きな安全リスクを抱えていると、私は言っているのです、それ、聞いてもらえませんか」
 警察D 「いや、それはちょっと別の話ですから、次回から撮影しないことで、納得してもらえませんか」
 私 「ますます納得できなくなりますね。テロ対策上、写真撮影は状況にとって規制するというのですから、私は制止されました。ということは、私の撮影行為は疑わしき対象にもなり得るのですね。であれば、もっと調べるべきでしょう。警察官から『カメラを出しなさい、撮影した画像をチェックする』というべきでしょう。そうしませんか」
 警察D 「私はそういうことを言っていません。だから、もう次回はしないということで」
 私 「テロ対策といいつつも、言っていることとやっていること、矛盾だらけ。まったく頼りになりません。警察官として、あなたは十分な素質を備えていないと私は思います。それ以上話をしても、結論が出ません。そうしましょう。この話は、私は後日あなたの上司、福岡署、いや必要あれば警察庁、国家安全委員会にレポートを送ります。それでよろしいですか」
 
 ・・・(また、「納得したね」という繰り返し、時間が経過していく)

 私 「もう何回も繰り返しているのです。私は納得していません」
 警察D 「納得しないということは、次回も撮影するのですか?」
 私 「そのときにも、法律の明文禁止条項がなく、撮影禁止の標識がなければ、私は撮影が自分の権利だと思っています。撮影します」
 警察D 「困りましたね・・・」
 私 「納得を求めてことが済むなら、世の中警察も要らなくなります。警察が困ったら、国民がもっと困るでしょう。どうしましょう。任意同行でも?そういえば、今日の対話、これ、職務尋問ですか?」
 警察D 「いえ、ただの質問です」
 私 「あなたは警察官の立場ですから、職務尋問じゃないでしょうか?」
 警察D 「・・・もう結構ですから、あなたが飛行機に乗るなら、もう行って結構です」(さっさと警察と保安員ら一行が去っていく)

 問題はほぼすべて露呈した。

 ① 受託手荷物検査機能のチェックインカウンター外部設置によってもたらされる深刻な安全リスクが存在し、検査後手荷物への監視機能がほぼ不在である。

 ② 保安警備管理業務を裏付ける法的根拠(実体)が十分に整備されておらず、標識などの告知義務(手続)も果たされていない。

 ③ このため、保安警備機能の実効性を担保する基盤が脆弱で、説得力も強制力(執行と罰則)も伴わない。頼りなく実効性が欠如している。

 ④ 上記総じて、善良なる市民の自覚や自律を前提にした「勧告・誘導」にとどまり、悪質なテロが想定されていない。口々に「テロ対策上」を唱えつつも、実効性あるテロ対策ができていない。このジレンマが問題の本質をなす。

 ⑤ 保安警備会社の運営体制上の不合理性・非効率性が目立ち、硬直化された体制がテロ対策の立案や実施に障害をきたしかねない。

 ⑥ 現場スタッフの事なかれ主義、問題もみ消しの印象すら与えてしまう。保安警備員や警察官の教育が欠如し、組織内部の情報や意思疎通の寸断が起こっているように思えた。

<終わり>

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コメント: 福岡空港保安警備上のリスク(2)~テロ対策の重大な機能障害

  1. 仙台空港の一部航空会社でも同様の扱いですね。テロ対策に取り組んでるつもりの詐欺ですね。

  2. さすが立花さん!感服です。私もこうありたいもです。

    1.  「職業病」のような本能もあります。質問と対話を重ねることによって組織の問題をえぐりだす。日常的な練習としても繰り返しながら、公益性があればなお良しといった感じです。

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