前提崩れ、アダム・スミス繁栄の原理に反する現象

 アダム・スミスは「国富論」で「分業と資本蓄積」を繁栄の2原理として挙げた。しかし、現今の世界ではスミスの原理に反している部分も出てきている。

 分業の世界はそのままではあるが、スミスが想定していなかった「非人類」たるもの、つまりAI(人工知能)という主体、IoTという形態が新たに参入してきた。主体の多様化が原理の前提を破壊してしまったのだ。ある意味で、人間の生み出した生産物がまさかの逆襲を仕掛けるというスミス想定外の事象が起こっている。

 資本蓄積はそのまま進行はしているが、結果が違ってきている。スミスが想定していたのは、資本蓄積によって再生産が拡大し繁栄をもたらすというものだった。それは、あくまでも「物不足」を前提としていた。際限なく再生産が繰り返され、資本の肥大化によって今の世界では「金余り」が進行する一方、需要が相対萎縮した。

 いずれもスミス想定外のことだが、前提崩れというのはいかに恐ろしいことか、改めて思い知らされた。