楽天は、中国で楽天家になれないようだ。中国の百度と提携して作った「楽酷天」(中国版「楽天市場」)はわずか2年足らずで、2012年4月27日に閉鎖することになった。
面白いことがある。楽天側、そして日系メディアの報道では、「市場の競争激化」を撤退の原因としているが、中国の国内メディアは、「現地化失敗」として大々的に報じている。
日中両方のメディアの温度差は何だったのだろう。いや、私が思うには、どちらも正しい。もはや言うまでもなく、撤退は熾烈な競争に敗れた当然の結果だ。問題は、競争に敗れた原因を突き止めるのが企業経営者が背負う重責ではないか。
中国メディアはこう報じている――。「(楽天中国)江尻裕一CEOは、その失敗の原因が現地化不足にあると認めず、やるべき現地化はすべてやったとし、『楽酷天の閉鎖は、現地化不足ではなく、競争が激化し過ぎたからだ』と述べている」
市場競争は激しい。このような時代に、単に市場競争の激しさを経営失敗の原因としていいのだろうか。少々楽天家的すぎるのではないだろうか。
社内会議から社内資料まで、社内公用語を英語にする楽天。三木谷社長は「日本企業をやめて世界企業になる」と豪語しているが、「世界企業」とは何か。社内英語化して、外国人役員を登用すれば、企業が国際化できるのか。楽天の経営理念である「楽天主義」はやはり、楽天家過ぎるように思えて仕方ない。
私は2年前からセミナーで企業の国際化に触れたことが何度もあった。「グローバル化とは、究極のローカル化であって、つまり、『グローカル化』である」。
日本企業は日本企業をやめる必要はない。やめるべきでもない。世界企業などはどこにも存在しないわけで、中国でビジネスをやるなら、とことん中国企業になることだけが鍵だ。これだけしっかり認識して、実践している日本企業は、まだまだ少ない。
同じ「市場」でも、「Ichiba」と「Shijo」が違う。