様態急変の中国ビジネス現場、生き残りをかけて・・・

 2009年10月、三大人事制度セミナー(上海、北京)で、私は、こう言った。

 「労働契約法の影響は何でしょうか。解雇できない、降格できない、減給できない、ということですが、さらに、今後は一つ追加します――。給料を引き上げなければなりません。来年(2010年)以降のキーワードは、『賃金』です。三つの側面からです。まず、法制度面では、『賃金法』の法案化。そして、政策面では、国民所得倍増計画、戦後の日本を真似してです。最後に、手法ですが、労働組合です」

 2010年2月、私は中国でいち早く、「賃金法セミナー」を開催した。「えっ、『賃金法』って何ですか、そんなの聞いたことないね」という状況だった。そのセミナーでは、私は上記の言葉を繰り返し、「賃金引上げ、人件費増は新法対応やコンプライアンス次元で考えるのが間違いです。企業経営の根幹に係わる重要なことです。新法が出なくても、企業は対応しなければなりません。そうでないと、痛い目に逢います。新法の成立を意識せずに、すぐに、明日からでも人事・賃金制度に取り組んでください」と指摘した。

 2010年4月、私は中国でいち早く、「労働組合実務セミナー」を開催した。セミナーで、再度、「賃金」「賃金」を繰り返し、「賃金問題でこじれたら、ストライキになる」と指摘し、中国のストライキ問題を30分以上の時間を割いて、法律面・実務運用面から解説した。

 2010年5月、ホンダ中国の大規模ストライキ発生、全面操業中止。それとほぼ同時に、富士康の従業員連続自殺事件で、中国労働者の賃金問題が全面的に浮き彫りになった。

 そして、2010年6月9日付の日本経済新聞の報道――。

 「中国共産党・政府は2011年から始まる次の5カ年計画に労働者の賃金を現在の2倍に増やす『所得倍増計画』を盛り込む検討に入った。最低賃金の引き上げなどを通じ、労働争議の多発を受けた賃上げの動きを政治的に後押しする。中国に進出している日本企業などにとって、人件費負担のさらなる増加につながるのは必至だ。・・・(中国の所得倍増計画は)池田勇人首相が掲げ、1960年代の日本の高度成長を先導した所得倍増計画を意識しているという」

 私の予測と予言は、ほぼ100%的中した。しかも、予想よりかなり早いペースで現実となった。

 6月29日(上海会場のみ)、【緊急セミナー】人件費高騰時代のスト・賃上げ対策 
 6月24日(北京)・6月30日(上海)、【人事・賃金制度シリーズ第1回目】労働契約・就業規則制定改定実務セミナー(北京会場のみ残席あり)

 6月末のセミナーは、FAXや新聞折込広告を待たず、Eメール配信告知の段階で超満員になった。増席しても、収容できないから、後方のスタッフ席で机がなくてもいいという参加者が続出した。昨年は、同一テーマのセミナー・研修会は、満席のため再開催や再々開催を行っていたが、今年は私の予定が満杯で再開催できないから、締め切らざるを得なくなった。

 私の予測を信じようと信じまいとどうでもいいが、一点だけ、変化の激しい中国では、その「変化」に対応するのが、企業自身の「変化」でしかありえない。これこそ、「不変」の法則だ。

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