現地採用日本人のここが困る、日本人らしさの喪失と日本語力低下

 私が最初上海駐在となったのは、1994年でした。その当時、日本人の現地採用がほとんどありませんでした。

 2000年に2度目の上海赴任時、日本人の現地採用がだいぶ増えました。当時の特徴としては、「中国屋」が多かったことが挙げられます。

 大学から中国語や中国経済、中国文化をずっとやってきて、いわゆる筋金入りの「筋肉マン中国屋」が多かった。目標は明確で、中国で自分が試されることによって、いずれ一旗を上げる・・・ですから、どんな安月給でもとにかく勉強と思えば、喜んでがんばって、自分を鍛え上げる。

 2001年、当社が立ち上げた当時、資金がなく、採用した日本人の初任給はわずか月給3000元でした。それでもやりますと、朝7時出社、夜10時過ぎの帰宅、高熱を出しても病体を引きずって会社に出勤する、そのうち、腕がどんどん上がる、給料もどんどん上がる。数年の鍛錬で、今独立して事業を興した、そういう素晴らしい人もいます。

 数年経ちました、最近、中国で日本人を現地採用しようとすると、こういう筋金入りの「筋肉マン中国屋」がめっきり減りました。

 日本人相場で中国人よりはるかに高い給料を要求する代わりに、いったい何を貢献できるのかは説明もできない、ただ、自分が日本人だということだけなのでしょうか?

 日本国内で食べて行けない人が、ど~んと中国に押し寄せて、ほんの少し中国語をかじったくらいで、日本人相場で就職しようとする人、企業にも迷惑だし、自分の将来に対しても無責任とは思いませんか。

 問題はここです。中国で、日本人に求められるのが何かというと、ほかでなく、日本人らしさ、母国語としての日本語の正確さであります。しかし、多くの日本人は、こういったところに欠けています。

 中国に来て、日本人の良さを忘れ去り、中国人の欠陥ばかり身につけてしまった日本人は、ダブルパンチで最悪です。(逆に、日本人の欠陥を捨て、中国人の良さを身につけてくれたら最高ですが)

 言語もそうです。日本人の採用は、企業が中国語力を重視しがちですが、肝心なのは、中国語ではありません。日本語なのです!日本語をうまく使えない日本人が非常に増えてきています。

 当社は、翻訳職を募集します。人材会社から紹介された日本人に翻訳テストを受けさせてみると、結果が最悪だったりします。訳された日本語は、読めない、意味不明、中国語の単語をそのまま日本語に置き換えるだけなどなど・・・問題の所在は、不勉強にあります。彼・彼女たちは、日本語の経済やビジネス情報を本当に読んでいるのか、ビジネス関連の翻訳(中→日)になると、惨敗!このような人もいます。

 これは、まだ良しとしましょう。一番困るのが、就職の目的です。人生プランというのは、節目と節目の間、ある程度流れに身を任せても良いが、節目節目はしっかりと目標と方向を定めておかないと、一生流されてしまいます。当座、食いつなぐために、腰かけとしての就職も立派だと思います、ただ、全体的な方向性がないと、自分にも、企業にも、自分を育ててくれた親にも、あまりにも無責任ではありませんか。

 90年代上海駐在時代の日本人旧友たちと話をしてみると、ほぼ全員が口をそろえて同じことを言って、嘆いています。日本人現地就職組の軟弱化が非常に進んでいる、すでに危険水域に入っているといっても過言ではありません。

 日本人の賃金相場というのは、あくまでも、日本人らしさや日本人の平均的価値観、仕事の進め方、きめ細かい顧客サービス、ネイティブ日本語などといった、何というのでしょうか、「不可代替性」に価値があると思います。こういったところに、いざ欠陥だらけになると、たちまち優秀な中国人に取って代わられます。今の香港が、その好例です。

 目を覚ませ、頑張れ!現地組日本人、自分の将来のために頑張れ!