私はこうして会社を辞めました(2)―ヘリコプター送迎就職勧誘

<前回>
(敬称略)

 私が大学を卒業する80年代後半の日本は、景気が非常によく、俗にいうとバブル期だった。今のような就職氷河期にまったく無縁で、むしろ、企業は新卒の奪い合い合戦に余念がない。

 ある日、トステムの先輩から会社訪問の勧誘を受けた。とても、気心の知れた先輩だったので、行くことにした。

 当日、都内にある約束の場所に行くと、車が待機していた。私を含む早稲田の学生が計3名、人数が揃うと、そのまま車が走り出す。トステム本社に向かっているのかなと思った矢先、車が到着したのは、江東区にある東京ヘリポートだった。

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 うっそー、ヘリコプターで工場見学にいくのだ。びっくり・・・

 まるで、アメリカ大統領にでもなったような気分で、ヘリに乗り込む。人生初のヘリ体験は、すばらしかった。特別サービスといって、パイロットが東京上空を数分間クルージングしてくれた。数々の高層ビルが模型のように見えて、私の胸の中に、限りなく優越感が充満していた。

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 決まった。就職は、この会社だ!

 今考えると、若い自分も単純だったが、会社も少しバブリー過ぎたかなと・・・ たかが学生で、何もできない学生を入社させるために、これだけ高いコストを使うのは、あまりにもばかばかしい(こういうことを言って、トステムさんには大変申し訳ない)。時代の翻弄だった。

トステム下妻工場(写真はトステムHPより)
 茨城県にあるトステムの下妻工場を見学して、再びヘリで東京に戻ると、日比谷の高級中華料理店で豪勢な夕食が待っていた。

 「さあ、どんどん、飲んでくれ」、人事部次長が陳年紹興酒を学生たちに次から次へと勧めた。

 ほろ酔い気分になると、次長が笑顔を浮かべて、「どうだろう、当社に是非来てくれないか?」

 断れるはずがない。そのままOK。これで、就職決定だ。

<次回>

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