青りんごの幸せ

 青りんごだ。

 台北から香港に向かうキャセイパシフィックの機内食のフルーツに、青りんごのカットが入っていた。

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 青りんごは、皮付きでサクサクとかじりつくと、ほんのりと土の香りがするのです。完熟モノよりも、「青りんご」は、少々未熟の「青さ」が魅力。果汁が多い深紅のリンゴなら、完熟で蜜のような甘さで貫禄を誇示しますが、青りんごは違う。甘いけれど、控えめの甘さに酸味や渋味が混じっている。私は、そんな青りんごの大ファンで、なんだか田舎臭いが、青りんごをかじっていると、大地に接吻するかのように土の温もりで放心状態に陥り、突如と生きる喜びに包まれる。

 地面から3万フィートの上空で、この青りんごを口にすると、無性に大地への愛が目覚めます。宇宙飛行士が暗い宇宙から、あの青い、青い地球を眺めていると、感動で涙がこぼれる話を聞きますが、宇宙まで行かなくとも、心情がわかるような気がします。

 「ドリンク、いかがですか」

 客室乗務員が何回も飲み物のお代わりサービスをしていると、毎回毎回新しいコップが使われていました。機内食のトレーに目をやると、こちらもプラスチックの食器だらけ、1日に地球上何百機何千機もの飛行機が飛んで、燃料が燃やされ、そして、このような使い捨ての食器も廃棄され、地球が汚されていくのです。私は、いささか自分も犯罪に加担しているような罪悪感に包まれました。

 われわれの次の世代、また次の世代になると、このような美味しい青りんごを食べることはできるのだろうか、そして、宇宙から眺める地球は、まだ青いのだろうか・・・。