「小さくても、強く、輝く小粒」、私の会社経営方針

 土日は休日返上。

 仕事が終わらない。金曜日に、E社から調印済みの契約書が返送されてきた。新たに大型人事制度構築案件の受注。いまは新規受注を見合わせているが、すでにオファーを出した案件は受けなければならない。

 7月と8月、日本人1名と中国人1名の増員。これで、狭いオフィスの席がいっぱいに埋まった。縁故であと数名の入社希望者がいるが、現在吸収できる状態ではない。エリス・コンサルティングというのは、とっても小さな、「超」が付く零細企業だ。正社員、派遣社員、派遣弁護士、嘱託社員合わせても9名、あとは翻訳業務の外注だ。

 2003~2005年頃のエリス・コンサルティングは、最多時24名も社員がいた。業務は「法人部」「情報部」「管理部」と三つの部門に分けて行っていた。すると、気が付いたら、社内会議では、「私たち○○部は・・・」という発言が飛び交っていた。社の全体利益よりも、部門利益や主張が先行していた。これは危ないと思った。小企業なのに、「大企業病」にかかっていたら、乳幼児の高血圧症のようなものだ。やがて、創業5年目にして黒字から赤字経営に転落した。

 2006年に、ダウンサイジングを中心とした組織改革を断行した。退職者を出しながらも、新規の人員補充はすべて見送り。情報部門の翻訳編集業務を段階的に外部委託に切り替えた。一部スペシャリストが退職すると、社外にいるアウトソーシーとして業務の請負をお願いした。

 3年ほどの期間で、社員数が三分の一にまで減らされた。事務所も、30名規模のスペースから、最大8~10名しか収容できない場所に移り、余ったデスクや椅子をすべて処分した。この事務スペースに収容できる人数以上の人は雇わないと決心した。

 一方、会社は増収増益に転じた。いまは、年商1億円に近いコンサルティング会社にまで成長した。正直いうと、増員、規模拡大さえすれば、年商数億円にもっていくことはさほど難しくない。しかし、過去の苦い経験を抱える経営者として、私の決意は固い。規模追求を徹底的に放棄する。その代わりに、「成長の質」を重視する。

 「百貨店」でなく、いつまでも「小さな靴屋」としてプレゼンスを強化する。いろいろな商品を売っていないが、「靴」に関してはトップクラスだ。このような「小さくても、強く、輝く小粒」であり続ける。巨人たちと戦える小人の唯一の武器でもある。もし、国づくりにたとえたら、私が目指すところは、シンガポールである。小さくても、世界トップクラスの競争力をもつ強い国である。

 そして、社員との関係も再考した。社員には優しくて、厳しい会社にすることだ。一見矛盾に見えるが、そうではない。「優しい」とは、決して「甘やかし」ではない。緊張感を常にもちつつ、張り合いとやりがい、そして生きがいを感じてもらうことである。待遇改善にも取り組んだ。大学の新卒を見ても世間平均の賃金相場である3000元から5000元代にまで引き上げた。先日、社内では、「賃金倍増5か年計画」を打ち出した。5年後の社員の賃金水準は、同業大手の倍にすることだ。

 社員とのオフの付き合いも、業務改善の重要な一環である。食事会の機会を増やす一方、今年からは社員旅行を実施する。来月の8月には、さっそく1回目として香港旅行が決まった。

 ということで、人事コンサルティング会社として、自社の人事を率先してモデルとなりえるものにしなければならない。いろいろと試行錯誤を繰り返しながらも、今後はがんばっていきたい。