「ムバラク現象」、ピラミッドのような頑丈な企業造りとは?

 アメリカが董事長を務める中東エジプト現地法人は、ムバラクという経理(マネージャー)を雇って、運営している。ムバラク経理は英語ペラペラで、アメリカ董事長のいうことなら何でも聞く「良い子」である。董事長もムバラク経理をわが子のように可愛がっていた。

 しかし、ムバラク経理は、民主主義よりも独裁統治で、しかも部下たちのことを粗末に扱ってきた。そして、権力濫用やバックマージンで、巨額の不正の財を成した。それを薄々と知りながらも、アメリカ董事長は目をつぶってきた。なぜなら、ムバラク経理管轄下の販売部門は売上げがよく、合衆国本社への貢献もよろしく、万事順調に見えたからだ。

51134_2業務報告~「ボス!すべて順調です。ご安心を」、「ご苦労さん」

 そして、ある日、とうとう部下たちが我慢の限界まで来た。溜まりに溜まった怒りを爆発させ、ストライキを実行した。さあ、事態の収拾に、アメリカ董事長はどうすればよいのか?

 合衆国本社の紹介を見ると、「民主主義」という立派な経営理念を謳っているのだが・・・。あっ、そうですか、民主主義は本社だけなのですか、じゃ、現地法人は?

 在中日系企業の皆さん、「ムバラク経理」が社内に存在していないだろうか?「ムバラク経理」は大変重要な存在だが、人間である以上、「善」と「悪」という二つの側面をもっている。「善」をいかに伸ばすかというのが大切だが、「悪」の抑止も忘れるべきではない。往々にして、その「悪」は上の人間(上司)にではなく、下や横に向けられるものであって、上司は見過ごしやすく、放置しがちになるものである。

 董事長や総経理は、特定の中間層を通してルーチン的な情報(特に日本語情報)を入れるだけでなく、会社のフロントライン、末端従業員の声にもときどき耳を傾けよう。現場から、予想外の情報が入るものだ。そこから問題や危険を察知できるネタがいっぱい入っている。

 中国のストライキなどの労働争議は、前触れもなく起きるといわれているが、とんでもない。前兆は現場のいたるところに転がっている。「前触れがない」とは、マネジメントが入念に情報を拾い上げられなかった「責任逃れ」のマジックワードに過ぎない。――一種の「ムバラク現象」である。