短い人生は急いで幸福駅を乗り越してどこへ行く

 先日、ある顧客企業の方から聞かれた――。「立花さんから見て、中国がいま一番必要としているものは何か」。

 哲学と芸術。

 ――私は考えもせずに答える。哲学は不変の原理原則を見出し、信仰を持つための基本である。芸術は感性を豊かにし、モノを創り出すための源泉である。

 「有用」「没有用」。―-中国では、物事についてはその効用(功利、有用性)をメジャーとして価値を判断する風潮が社会の主流になりつつある。つまり、功利主義(Utilitarianism)である。法律にまで、功利主義的に運用するとなると、法治社会からの断絶が決定的になる。

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 最近、叫ばれている「軟実力(ソフトパワー)」とは何か、この国は、その真の意義を考えているのだろうか。文化といえば、オペラハウスを作ることしか思いつかないような役人は、この国の中に溢れているだろう。

 中国の経済成長が暴走すれば、いずれ脱線する。

 「狭い日本は急いでどこへ行く」という標語があるが、「短い人生は急いで幸福駅を乗り越してどこへ行く」と置き換えたくなる。人生に必要なのは、脱線する高速鉄道ではなく、風景をゆっくり楽しめるローカルの鈍行列車だ。