心の革命、賃上げで人材を引き留められるか

 7月27日(水)。13時から、K社グループ中国現地法人社長研修会。3月開催の予定だったが、東日本大震災で7月に延期した。現地法人各社の総経理、主要幹部ら20数名の出席。短い2時間で、中国労働法と労働現場の状況概略をコンパクトに解説し、K社グループのいくつかの人事労務問題について意見を述べた。K社グループでは、その浙江省現地法人が1年以上かけてすでに当社人事制度を導入済み。私の講演後の第2部では、浙江法人の総経理が体験談、新制度実施状況の報告を行うことになっている。

61420_2K社グループ中国現地法人社長研修会(2011年7月27日、上海)

 研修会終了後、16時から、虹橋地域の新規R社で人事制度改革の打ち合わせ。東京本社人事部長、現地法人総経理をはじめ、総勢5名の出席。人材の流出問題が深刻なR社は、これから中国国内ネットワークの大規模拡張を控えているだけに、危機意識が高い。

 「他社に比べて賃金水準が全体的に低いのが原因か」と悩んでいるR社には、私は以下の見解を示した。

 他社比較の賃金水準問題は確かに要因の一つなのかもしれないが、ただ賃金水準を上げるだけでは、しばらく経つと辞める人は相変わらず辞める。その理由は、社外ではなく社内にあるのだ。他の従業員に比べて(中国では給料情報が通常、筒抜けになっている)の不公平感が、辞意を芽生えさせているのである。

 賃上げは別の意味で一種の麻薬である。打たれると、しばらく高揚感に包まれるが、それが決して長く続かない。せいぜい1か月ほどではないだろうか。人間は福利の増加に対する順応性が抜群で、すぐに現状に慣れてしまい、次のターゲットを目指して物欲が常に膨張し続けるのだ。たとえ業界一の賃金相場を誇っても、それが人材を必ず引き留められるかというと、答えは必ずしも「Yes」ではない。

 問題のキーポイントは賃金ではない。賃金は、「価格」に過ぎない。ポイントは、その「価格」が正当にパフォーマンスや貢献という「価値」を評価できているかどうかにある・・・

 この辺になると、制度の改革はもちろんのこと、それよりもむしろ、マインドセットや企業文化の変革、つまり、心の革命がもっと重要である。

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