ケニア(6)~サファリの決め手その二<ドライバー・ガイド篇>

<前回>

85867_1ドライバー兼ガイドのイザックさん、日本語の動物名も10個くらい知っている

 「ライオンだ」

 ドライバー兼ガイドのイザックさんが少々興奮気味。アンボセリの2日目の早朝、都合3回目のゲームドライブで早々と2頭のメスライオンに遭遇。いや、遭遇というよりも、イザックさんが見つけてくれたのだ。その直後、数キロ離れたところで1頭の大きなオスライオンも!

85867_285867b_2早朝からメスライオン(上)とオスライオン(下)を発見(アンボセリ、12年8月12日撮影)

 ケニアのサファリで、アフリカゾウやキリン、シマウマなどは黙って車を運転するだけでも必ずどこかで遭遇するのだが、遭遇率がもっとも低いのは、ライオン(特にオス)、チーターとヒョウの「御三家」なのである。だから、いかにこの「御三家」を見つけてくれるかがガイドの腕の見せ所になる。

 頼れるものは、無線交信情報と周辺情報の読解力、目と勘、そして最後に運、この三つだと思う。

 まず無線交信では、同一地域のサバンナを走るサファリカーから発信される「動物遭遇・目撃情報」が飛び交う。ただ、これらの情報はあくまでも、「見た」という事実を伝えるだけで、イザックさんによれば、中に見間違い情報やいたずら情報も多数含まれている。その情報を鵜呑みにして広大なサバンナを飛び回るだけではガソリンの無駄遣い以外、サファリ客からの罵声を浴びることくらいしか収穫がないだろう。

 無線で得られる情報は、たとえ真実であっても、あくまでもスポット的な静態情報である。動物は動いているもので、その動きを読んで先回りしていかないと絶好なタイミングと絶好な場所に恵まれることはない。

85867_3動物を探すイザックさん
85867b_3ライオンの足跡

 たとえば、早朝目覚めた動物は、まず水を飲みたいので水場へ向かうだろうから、水場の向こう側に移動して待ち伏せしたり、逆に午後の暑い時間帯には動物は動きがなく大抵木陰で昼寝しているだろうから、静かに木の方向へ近づいたりする。

 それから、周りの風景も大切な情報になる。たとえば、草食動物がまったくいない場所は、猛獣の危険を感知して逃げたという可能性があるので、要注意だ。あるいは、ハゲワシが集結したり、空を飛び回っていたりすると、近くに動物(獲物)のフレッシュな屍骸があることを示唆する。それが往々にして、ライオンなどの大型肉食獣が食事中だったり、あるいは飽食後近くでリラックスしていたりすることが多い。

 サバンナという「場」に一種の異様な雰囲気が漂っているとき、そこには、きっと何かがある。これはまさに勘である。

85867_485867b_4夕方もまたライオン目撃(アンボセリ、12年8月12日撮影)

 あとは目。イザックさんの視力はおそらく2.0以上あると思う。運転しながら、目がレーダーのように左右上下をサーチし、数百メートル先、いや、ときどき1キロ以上先の「点」を見事に見つけてくれる。的中率の高さには脱帽だ。

 よく考えると、サファリは、経営コンサルティングに共通しているものがたくさんある――。情報の収集と選択、情報の分析、いろんな事象の相互関連性・因果性の読解、真相の発見・・・。そして、ガイドの報酬(チップ)は、やはりサファリ客の期待にどこまで答えられたかという成果で決まるのである。完全成果主義の評価制度になっている。

<次回>