日中友好不要論、友好よりもしたたかな大人の付き合いを

 「日経ビジネス2月18日号」編集長山川氏のコメントを転載する。日本企業もいよいよ中国との付き合い方について悟ったように思える。経済的実利を優先的に考えるのなら、性善説的な日中友好云々よりも、まず、「したたかな付き合い」を目指すべきだ。私の言葉に変えると、「ルールを決めた大人の付き合い」である。「友愛」などを語る鳩山元首相だが、ご本人は大の資産家だから、私財を日中友好に献上するなら、誰も文句を言う人はいないだろう。ただ国益を預かる身分として少なくとも国民の合意を得てからものを言ってほしかった。それに比べると、今の安倍政権ははるかにましで、これこそ、彼も病気の引退で悟ったのか、したたかな外交を始めているように思える。

 私が言いたいのは、純粋たるボランティア、収益を無視する献身的な国際交流であれば、「友好」は大いに結構だ。ただ、経済活動ベースなら、「友好」を語るのはいかに偽善であろう。お金儲けのために、「友好」があったほうが都合がいい、そういうことなら、山川氏が指摘された通り「したたかさ」のほうが効率的だと、こういうことである。

 「日本企業は相手を信用しすぎかもしれません」――。
 「反日・中国と生きる道」と題した今号の特集のゲラを読みながら、2011年にロッテグループの重光昭夫会長を取材した際に聞かされた言葉を思い出しました。「なぜ日本企業の中国ビジネスはうまくいかないことが多いのか」と質問した時の回答でした。「新興国は低信頼性社会。何が起きるか分からない。例えばあるビルを建設会社に頼んだ際、手抜きなくやっていると誰が証明できますか」。
 こう続いたと記憶しています。
 新興国を攻める際には、都市の中心部に「ロッテ」の名を冠した複合ビルを建て、百貨店やホテル、レジャー施設などを展開する。そうして地元に社名を知らしめ、菓子や飲料を販売していく。これがロッテの勝利の方程式です。その際、グループに建設や石油化学部門を持つ強みを生かして、再開発事業を決して地元の業者任せにしない。将来の政治リスクも考えて地元自治体には精いっぱい恩を売っておく。こうした、したたかさが同社の新興国での快進撃を支えています。
 安心・安全の国に育った我々は、どうしても性善説に立って、物事を考えがちです。そのこと自体は悪いことだとは思いません。ただ、特に中国では現地の顧客や従業員、取引先に尽くそうとする熱い気持ちと、相手の言いなりにはならないという冷静さの両方が必要です。特集で紹介していますが、3回目を数える反日デモ後の中国人消費者調査でも、日本製品の不買意識に劇的な改善は見られませんでした。この国とは、したたかにつき合っていくしかありません。(山川 龍雄)