リアカー引っ張っておでん売れ!経営者とは

 私のもとにはたまに、独立や起業したいという相談がくるが、ほぼすべて突っぱねている。拒否し続けると、相談が来なくなるものだ。「立花さんって怖い」が定評になったようだ。

 特にブログとか見てやってくる方や、どっかで私の名前を知ってやってくる方には、私は基本的に一切アドバイスしない。面識もないのに、私がどうやってアドバイスするのか。他人様の人生を左右するようなことを無責任に言えるわけがない。

 もうひとつ重要なことだが、私自身の起業は緻密な計画をもったわけでもなければ、他人に相談したこともなかったのであった。ただ酒飲み過ぎて、泥酔の勢いで、よし、こんな会社辞めてやるぞという極めて無謀かつ乱暴な辞め方だった。

 人間はたくましい。逃げ道を断ってしまえば、なんとか生きていけるもんだ。そういう意味で唯一、私自身の実体験から言えるのは、「逃げ道を断つ」ことだ。そういう意味で、相談にくる方々の大半は逃げ道を残したいと考えをもっているようで、私のアドバイスは役に立たないのである。

 物的に逃げ道があったほうが健全だが、心的には逃げ道を断ったほうが健全だ。物心の不一致がジレンマだ。いろんな会社の幹部やキー社員の研修を引き受けているが、私はいつもこう言っている。

 「会社から首を切られることが怖いか。首を切られるまえに潔く会社を辞められるか。ネチネチ会社に退職金の交渉をするか。そんな時間があったら、すぐにでも次の職に付ける、自分の商売を始められる、もっと大きな金を稼げる・・・そんなことが出来たら、そもそも会社に首を切られるよりも、自分から会社の首を切っちゃえばいい。そうなれば、何も怖くない。この力を持ちなさい。生き抜く力、サバイバルの力。会社勤めで給料までもらってサバイバル力を作っていける、こんな都合のいいこと世の中にほかあるか」

 会社にとって、一番必要とする中核人材は、ずばり「いつでも会社を辞められる人」である。いつでも会社を辞められる人材を引きとめるために、会社も進化しなければならない。互いにある種の緊張感をもち、常に変化を引き起こす。このバランスには均衡なる力関係が必要だ。

 初歩的な仕事を嫌い、上等な仕事をやりたい人はたくさんいる。ちょっとそこの課長さん、リアカーを引っ張っておでんを売ってこい。何言うんだ。おれは課長だぜ。リアカーを引っ張っておでんをバンバン売ってそのうち店舗をつくり、気が付けばFCまでやってしまっている。ここまでの気魂や器をもっているかどうかだ。

 起業の基本は、生きる力である。