「労働者貴族」を保護する労働法令、中国賃金法令の公布で最悪の状況に

 2月2日上海で開催予定の「『賃金条例』公布に伴う影響と実務対応セミナー」は、定員超過の満席になり、2月6日に追加開催となった。

 中国初の賃金法が2015年早々公布確定となった。このインパクトが大きい。ただ、私の「3階建™人事制度」を導入済みの企業では運用要領のリマインドだけで、ほとんど実務上制度の調整は不要である。「3階建™人事制度」は早い段階で賃金法令の公布を見越して、折り込み済みである。

 賃金法令は労働者の賃上げ要求に法的担保を提供し、賃上げ・生活改善に国が支援する姿勢を見せることで、経済低迷や格差拡大のなか生活苦に喘ぐ労働者の不満を企業に転嫁するものになろう。過酷な解雇規制は失業者による社会コストの企業への転嫁であり、これに加わり賃金法令の公布・実施により、企業は低パフォーマンス従業員を抱え込むだけでなく、賃上げの負担で労働生産性の更なる低下を余儀なくされ、最終的に新規採用を減らすほか道がない。

 大卒700万人プラス就職浪人、失業者1000万人(実状はもっと悪かろう)の時代。社会全体的利益を考えると、企業雇用の流動性を高め、就職口の拡大ほかならない。しかし、現行労働法制度は企業内労働者の既得利益の保護に主眼を置いているだけに、その一番の受益者は高給取り者でその手厚い既得利益の保護になってしまい、まさに本末転倒である。

 最近多くの労働訴訟を見てもわかるように、労働者の権利主張でなく、高級管理職など「労働者貴族」の福利争いである。労働法は労働者階級の味方といっても、多くの国民が労働者にすらなれずにいるのである。社会主義と自称する中国の労働現場では、笑いに笑えない滑稽な現象が起こっている。

 われわれ企業は中国の法制度を変えることができない。変えられるのが企業自身である。改革を躊躇った場合の中長期経営シミュレーションにすでに取りかかっている企業も少数ではないだろう。数字を見れば一目瞭然だ。

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