超一流ホテルと超一流コンシェルジュ、価値の生み出し方

 良いものを知る。一流になるにはまずは一流を知ることだ。というのが私の主義だ。大前研一氏の著書「旅の極意、人生の極意」も私の愛読書の一冊である。もちろん、大前氏が薦めるような旅が完全にできているわけではない。でも、できるだけ、一流の旅をしたい。

 5000円のビジネスホテルと5万円の超一流ホテル、ざっと見て10倍の価格差があるのだが、そこで10倍以上の価値が実現できれば十分にペイできる。

 ホテルは寝るだけだから、安いところで十分だ。そういう場面も確かにある。だが、ホテルをただ寝るだけのツールにするか、あるいはそれ以上個人にとって価値を生み出す素材にするかは、個人の判断と使い方次第である。

 「価格」と「価値」は、まったく異次元のものだ。物理的な金額で評価すれば、それはあくまでも「価格」の世界である。しかし、「価値」の世界に昇華すれば可能性が無限大になる。

 昔サラリーマン時代、出張先の宿泊ホテルは自分の職級で4つ星ランクだったが、自腹で差額を払って5つ星にアップグレードして泊まった。経費請求のとき計算が面倒で総務の人にだいぶ睨み付けられた。それでもやめなかった。

 高級ホテル宿泊の楽しみの一つはコンシェルジュとの対話である。宿泊客の様々な相談や要望に応える「よろず承り係」だが、通常の道案内やレストランの紹介を超えるリクエストをしてみると面白い。たとえば、「北海道から調達してきた干しナマコを洋風仕立てに調理してくれる中華レストランを紹介してくれ」と、私がシンガポールの某高級ホテルのコンシェルジュに無理難題を押し付けたことがある。その結果は予想以上に素晴らしかった。

 上級者コンシェルジュに学べるものが多い。その価値はホテル業界をはるかに超えて人生に通用するものである。