がんの話(3)~「治療」という商品が悪魔に変身した日

<前回>

 問題の焦点が「治療」に移ってくる。「治療」は医療業者の主力商品である。消費者が役に立たない商品を衝動買いした場合、クーリングオフ制度で業者に返却したり、あるいはそれができなくとも、代金を捨てて商品を廃棄処分すればよい。

 だが、「治療」という商品は、返品も廃棄処分もできない。それどころか、「消費者」である患者の体や後日の生命維持・生活品質、ないし寿命に本質的、重大かつ深刻な影響を与え得る。その副作用は患者を地獄に落とすことだってたくさんある。「治療」という商品は、悪魔に変身する可能性を孕んでいるのである。

 数キロ単位の臓器摘出でたとえがん細胞一個残らず除去したとしても、術後の生活品質や寿命に多大な負の影響を与える。しかも、臓器周辺のリンパ節まで取り除くわけだから、栄養供給機能や老廃物回収機能、感染免疫機能等々が大幅低減する。それで新たな病気を引き起こし、ないしがんになることもあり得るという。

 さらに抗がん剤の問題。近藤医師の著書によれば、抗がん剤が効くがんは、たった1割程度だという。がんの転移・拡散を防止するために、とりあえず抗がん剤をやっておけば安心だ。これも大きな誤謬だ。

 非転移がんの患者。早期切除したから転移しなかったのではなく、もともと転移する性質をもっていなかったからだ。問題の核心的本質は、がんの発見時期でもなければ、がんの治療でもなく、まず、がんの性質なのだ。

 転移がんの場合、手術や抗がん剤など治療の副作用がたくさんあっても治療効果が期待されないのであれば、これを試みる価値があるか。これは、患者本人が自身の価値観や人生観、諸々の事情を考えたうえで判断することだ。その前提は、医療側が患者に客観的な情報供与を行うことである。

 どのようながんにかかったのか、治療した場合と治療しない場合それぞれのメリットとデメリットを患者が十分に理解したうえで判断する。たとえ治療を選択した場合、どのような治療があるのか、それぞれのメリットとデメリット、勝算の確率(治療事例や臨床データ)などなど多くの判断材料が必要となる。

 しかし現状、大多数の日本人患者は、完全な情報弱者側に立たされている。次回は、医療情報の問題に触れてみたい。

<次回>