キャメロン紅茶雑談、工業化が農産物のバリューを奪う天敵

 キャメロンハイランドといえば、紅茶。高原の冷涼な空気が茶の栽培に向いている。朝、早いうちに、あの有名なBOH茶の茶畑農園を目指して、ガイドのエランさんが運転しながらマレー紅茶物語を語ってくれる。

160614-0854-Cameron Highland-BOH紅茶農園

 エランさんはインド系マレーシア人。とはいっても、インドに一度も行ったことのない3世である。祖父の代がイギリス人に連れられてマレー半島に渡ったのは、紅茶畑の開拓のためであった。

160614-1149-Cameron Highland-ガイドEranさんガイドのエランさんと

 象を使ってジャングルを切り開いたところ、紅茶を栽培する。紅茶は付加価値の高い農産品で、次第に農場主が巨大な利益を手に入れ、一大産業を築き上げる。いまは、BOH茶のオーナーは定期的にヘリに乗って、農園の視察にやってくるという。

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 この辺の話はセイロン茶によく似ている。7年前のスリランカ旅行、ヌワラ・エリヤの紅茶農園を訪れたときも、同じような物語を聞いた覚えがある。人件費コストの安い農産品の工業化、そしてブランド構築に取り組み、そこで巨大利益を捻出する。搾取といえばそこまでだが、ヨーロッパの植民者のビジネスモデルだった。

160614-0941-Cameron Highland-BOH紅茶農園BOH茶農園のティールームにて

 ただ、キャメロンの紅茶をセイロン紅茶と比べてはいけない。スリランカに行ったことのない人は、ある程度の感動もあろう。一面と広がる茶畑、高原の美しい景色・・・。ところが、スリランカ経験者から見れば、キャメロンは子供騙しのようなものだ。

160614-0907-Cameron Highland-BOH紅茶農園茶畑がブライダル写真のロケ地になっている

 茶の品質もまったく違う。たとえば、スリランカの場合は安い労働力を使って手摘み中心だが、キャメロンの紅茶農園では機械摘みが一般的になっている。高級セイロンと飲み比べしてみるとすぐ分かる。香りや繊細さ、その差が歴然としている。

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 やはり現代社会では、工業化がある意味で農産物のバリューやプレミアムを低下させる主因である。