知的好奇心もたざる者の受難時代、思考力と生命力

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 読書を乗り越えて、思索の世界へ。さて、日本人の実態はどうだろうか。

 OECDの国際成人力調査(PIAAC、2012年版)によると、「新しいことを学ぶのが好きだ」、つまり「知的好奇心」という項目では、日本はOECD調査対象21か国の平均値を大きく下回り、最下位の韓国に次いで低い。

 日本と対極的にあるのは、アメリカやフランス、イタリア、スペインである。この国々では、現時点の学力は相対的に低いものの、知的好奇心が抜群に際立っている。

 日本人は決して読書しないわけではない。ただ、読書の中身を見ると、「Know Why」よりも「Know How」に熱中する傾向が断然強い。つまり読書という外来の栄養摂取に偏り、内面的な思索に基づく消化と昇華機能が欠落しているということだ。

 OECDの調査で日韓がそろって下位を占めている。その背景には儒教の影響も否定できないだろう。今の世界は唯一の正解が存在しない質問が充満しているだけに、思索によって文脈を作り、自ら独自の解答を出していくしかない。

 学習力から思考力、思考力から生命力を引き出し、強く、強く、生き延びよう。

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