2月27日と28日の米朝首脳会談、先走り過ぎて妄想に近い大胆な予測をしたい。トランプ大統領と金正恩委員長は以下の合意(一部非明文の暗黙合意)をする――。
1.米朝国交樹立に向けて実務協議をはじめ、ワシントンと平壌に両国代表事務所を開設する(トランプ大統領の今回任期内に国交樹立へ)。
2.朝鮮戦争の終結宣言を年内に行う。
3.北朝鮮は新規の核開発を中止。ただし既存の核兵器の廃棄は段階的行う(明確なスケジュールなし)。
4.対北制裁は合意の実施状況次第、段階的に解除する。
5.北朝鮮は対中牽制役を引き受ける(非明文化事項)。
6.米の監督のもとで、北上位の朝鮮半島の統一を推進する(非明文化事項)。
日本にとってあまり良い話ではないが、米国利益を考えると、上記が最善である。トランプ氏はこれでほぼ間違いなくノーベル平和賞を手に入れる。もしや金正恩氏もそろって受賞するかもしれない。
米国には3つの選択肢がある――。
1.中国と組んで、北朝鮮を敵にする。
2.北朝鮮と組んで、中国を敵にする。
3.中国と北朝鮮の両方を敵にする。
1は失敗証明済み。3は中朝を組ませることになるから、賢明ではない。残るのは2のみ。
北の核と、中国の勢力、どっちが主たる敵か、明らかだ。トランプ氏はシリア、中東やアフガニスタンから米軍を引き上げ、選択と集中で中国に資源を集中投下しようとしている。このときに北を敵に回すのではなく、取り込むのである。
北が米本土に一発を打ち込むのが米の唯一の懸念。これさえ解消すれば、あとは簡単。しかし中国の脅威は違う。四方八方から迫ってきている。あと10年くらい経てば、中国の対米戦が可能になる。
北の核は金政権維持の唯一の担保。これを絶対に手放すことはあり得ない。だったら、持たせるしかない。その代りに米の手先になり、中国への牽制役を引き受ける。というディールがより現実的だ。
このたびの米朝首脳会談がハノイで行われるのは、米国がベトナム(進行形)と北朝鮮(未来形)という南北2つの牽制パワーの形成を誇示しようという意図が込められているのかもしれない。
トランプ氏は2月末の米朝首脳の合意(あれば)をもって、3月の米中首脳会談に臨むだろう(3月1日の協議期限を1か月か2月延期)。
トランプ氏と金正恩氏はともに、帝王学に精通している。近代民主主義の枠組みを外して、ローマ・地中海史における国家像や国際政治の次元に当てれば、いずれも君主の合理的な意思決定になるだろう。