燃料節約のため撃墜されたのか、マレーシア航空17便

 ウクライナ上空で撃墜されたマレーシア航空17便について、燃料節約のため紛争地域上空の最短ルートを取っていたのではないかという憶測があり、関連報道が飛び交っている。これはむしろ一般的に、もっとも直接に連想できるシナリオであろう。果たしてそうなのだろうか。

 経営者目線からいえば、燃料コスト削減は確かに経営上重要な部分である。ただ、乗員乗客の生命リスクと引き換えに僅かな燃料が削減できたとしても、そのリスクとリターンの比例が著しくバランスを崩すものと容易に想像できるし、通常の経営者なら決してそのような愚かな経営判断はしないであろう。馬鹿なオーナー経営者ならまだしも、まして大組織のなか、雇われ経営陣はこんなリスクを取るのだろうか。しかも、マレーシア航空は政府が7割も出資している政府系企業なのである。

 いろんな報道を見ると、以下の事実が分かった――。マレーシア航空17便が17日に撃墜された事件について、同ルートは他の多くの航空会社にも利用されていた。エア・インディア113便がわずか25キロメートルしか離れていない場所を飛行していた。シンガポール航空351便がすぐ後方(約26キロメートル)を飛行していたり、英国のヴァージン・アトランティック航空301便がミサイルの発射されたポイントから約200キロメートルの地点を飛行していたなどの事実が判明した。

 つまりは、場合によってはマレーシア航空17便ではなく、エア・インディア機やシンガポール航空機が撃墜されていたかもしれない。あるいはヴァージン・アトランティック航空機が犠牲になっていた可能性もあり得るのだろう。

 別の発表によれば、16社のうち15社のアジア太平洋航空会社連盟(AAPA)加盟航空会社が同ルートを飛行しているという。そもそもこのルートはヨーロッパから東南アジア方面へ抜けるための一般的なルートの一つであり、同日も事故がなければ300を超える航空機が同空域を飛行する予定であった。

 さらにIATA(国際航空運送協会)の取材報道では、同協会は、「いかなる航空会社もその乗客乗員および航空機の安全と引き換えに燃料節約を行う可能性はない」と声明を発表している。やはり私の観点と同じ趣旨の声明になっている。

 常識を疑えとよく言われるが、メディアや一般常識への過信をせずに、多方面の情報収集、複眼的目線、そして論理的な思考は大変重要だと、そう考えている。