国連本部が北京にやってきた日、いちばん困るのはだ~れ?

 国連が分裂する。そんなことがあり得るのか。

 米国のケリー・クラフト国連大使が9月16日、台北駐ニューヨーク経済文化弁事処(在ニューヨーク中華民国総領事館に相当)の李光章処長(総領事に相当)と昼食を共にした。クラフト国連大使はこの対面を「歴史的」とし、トランプ政権による台湾とのさらなる関係強化を象徴するものだと述べた。AP通信やワシントン・ポストの報道によれば、クラフト米国連大使は李光章処長の招きに応じて昼食を共にし、2人は国連及び国連体系における組織的業務に対する台湾の参与を深めていくための方法などについて話し合ったという。

ニューヨークの1番街・イーストリバー沿いにある国連本部

 米国が台湾の国連復帰に動いているという見方があるが、現実的に中華人民共和国が国連安保理常任理事国として否決権を発動すれば、議案は否決され、つまり、現状下において台湾の国連復帰はほぼ不可能だ。にもかかわらず、米国はなぜ動いているのか気になる。考えられるのは、そもそも否決を引き出すことが目的だったのではないかというシナリオだ。

 国際機関が相次いで中国に浸透・支配されている。2020年7月8日付日本経済新聞がこう報じている――。

 「中国は世界保健機関(WHO)だけでなく、他の国際機関でも着々と存在感を高めている。15ある国連の専門機関のうち、国際電気通信連合(ITU)や国連食糧農業機関(FAO)など4機関のトップが中国人だ。中国の意向が組織運営や政策に反映されるケースも少なくない。国連予算の分担金の拠出では、中国は日本を抜いて米国に次ぐ2位に浮上している。未払いの国の増加で財政悪化に苦しむ国連にとって欠かせない存在だ。幹部クラスの要職ポストに人を送り込むなど、人事面での影響力も増している」

 金に物を言わせる。このままでは国際機関の中立性が損なわれ、設立主旨から逸脱し、存在意義が薄れる。台湾の国連復帰が失敗すれば、その事実がより明確なエビデンスとなる。これを踏まえて米国は世界保健機関(WHO)同様、国連から脱退する可能性が出てくる。米国が国連から脱退した場合、当然、分担金の負担を拒否する。その分、中国が穴埋めできるのか。

 さらに仮説だが、米国がニューヨークにある国連本部まで退去を求めた場合、それがまさか北京に移転するのか。金の問題を別として、自国の土地に国連本部に来られていちばん困るのは、中国共産党政権自身ではないか。中国人民がたびたび国連本部前で抗議デモでもしたら、警察や軍隊を出動して鎮圧に当たって世界に叩かれるのがオチだ。

 喧嘩するよりも、平和な棲み分けが良い。いかなる組織にも腐敗などの問題が生じ得る。そこでもっとも有効な方法は第2組織の誕生と牽制だ。国際組織はそもそも独占的になっているからいけないのだ。労働組合だって第2組合があるわけだから、国際組織も2つあっていいのではないか。国際民主主義の「2党政治」ならぬ「2組織政治」がより健全的だ。第1国連と第2国連、第1WHOと第2WHO、互いに競争したらいい。

 私はものすごく合理的なシステムだと思うのだが。

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