料理店のPDCA思考回路、成長志向とスローライフ

 昨晩書いたブログ記事「2009年09月12日 お節介!熱血コンサルタントと料理店主の熱き戦い実録」に、読者から短いコメントが2本寄せられた。この2本のコメントから、私が、2組のキーワードを抽出した。

 「文化の違い」
 「客商売で客を客とも思わずに商売ができる」

 まず、「客商売で客を客とも思わずに商売ができる」とは、とてもパラドックス的(逆説的)だ。常識で考えると、客が来なくなるはずだが、実際は来ている。しかも、ある程度繁盛している。需要と供給の関係が成り立っている。この店の味は良い。サービスも、一人のウエイトレスを除いて、全体的に悪くない。

 そこで、客としてリピーターになりたいので、玉に瑕を指摘したくなる。言ってみれば、この店にさらに成長してほしいという気持ちがあった。そこが問題になる。

 「文化の違い」、価値観の違い、経営観の違い、美学の違い・・・といろいろあるが、マスターは、些細な問題でも解決しようと考えていないだろうね。いや、違う。マスターの考えている解決方法と私が考えている解決方法が、まったく異なっていることに気付いた。

 「ビール樽から泡が飛ぶ ⇒ お客さんに引っかかる ⇒ 謝る(服務員が謝らないから、マスターが代わりに謝る) ⇒ 事件終了」、これは、マスターの思考回路。

 「ビール樽から泡が飛ぶ ⇒ なぜ泡が飛ぶかを究明する ⇒ 泡が飛ばないようにする、飛んでも客にかからない方法を講じる ⇒ 謝らないですむ ⇒ さらに次の問題点を発見し、解決していく ⇒ ・・・」、私がコンサルティング現場の思考回路を持ち込んでいる。

 「謝罪」が、マスターの解決方法で、事故発生時の救済方法である。
 「謝罪しないための方法」が、私の解決方法で、事故発生防止のための予防方法である。

 PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act cycle)は、螺旋階段のようなもので、日常の経営や生活の中で、繰り返し、繰り返し、実施していくと、いろいろな問題点が解決され、経営や生活の品質が向上する。このようなツールなのである。何も重苦しいものではない。いったん、頭にそのような思考回路ができてしまうと、自然に行動に移る。

 しかし、残念ながら、中国人の中、PDCAのできる人はほんの一握り。生産現場でQCを得意とする日本人も、最近、PDCA力の低下が著しい。全般的に、めんどうくさいというか、惰性的というか、現状を変える意欲も気力も見られない。けれど、決して画一的にそれを否定するわけではない。惰性的というのは、時には必要だ。

 だから、この店には、私は、「成長」を期待している一方、マスター本人が「成長」を望んでいない。そこで根本的な食い違いが生じ、昨日の議論に至ったのである。

「成長」を望まないのも、価値観である。スローライフを望む方であれば、私は、甚だしい失礼なことを言ったことになる。真摯にお詫びする。