世の中はなぜ乱れているのか?

 世間が乱れているのは、名利欲知(名声、利益、欲望、知識)という4つの大きな乱因(原因)があるからだ。老子は『道德経』の中で、こう説いた。「名」と「利」は理解できるが、「欲」と「知」はなぜ乱因になっているのだろうか。

 「欲望」は、経済の源泉になっている。人類がもし動物と同じレベルの単なる生存欲望にとどまっていたら、経済社会は成り立たない。世の中に売られている財・サービスの大半は生存必要レベルを超えている。いってみれば、動物以上の「人間欲望」は、「名」や「利」の生みの親でもある。

 「消費者のニーズやウォンツを掘り起こす」という現代マーケティング学の基本は詰まるところ、いかに人間の欲望を煽り立てるかの話にすぎない。いわゆる「付加価値」とは何か。つまり、なくても困らない(生存に影響がない)ものであり、無理やりつくり出して付け足したものだ。

 「知識」は、世の乱れの原因。といわれると、いささか納得しない。「知識が運命を変える」「知識は力なり」「知識すなわち富」という人もいるが、それは確かにそのとおりだ。ただ知識は諸刃の剣。現代社会のエリート犯罪はまさにその典型である。そこまでいかなくとも、地球環境を壊しているのも間違いなく人類の知識である。

 欲望を煽る方法は知識であり、知識に対する希求は欲望である。「知識」と「欲望」は切っても切れない関係だ。だから世の中は乱れるわけだ。

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