5月にモスクワで開催される某学会に参加する予定だが、学会側から「検討中」の通知がやってきた。おそらくキャンセルされるだろう。安全上の理由ならともかく、ロシアという理由で中止するのは納得いかない。
イタリアの報道によると、最近、イタリアの作家でミラノ・ビコッカ大学のパオロ・ノリ教授が、講義にロシア人作家の作品を取り入れることを禁じる通知を大学から受けた――。「今朝、大学の教務担当副学長から、学長がドストエフスキー関連科目の授業を延期することを決定したという通知が届いた。今は非常に緊迫した時期なので、あらゆる論争を避けるのが目的だ」(3月2日付Sohuニュース)
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキーは、ロシア帝国時代の小説家・思想家である。代表作には『罪と罰』『白痴』などの名著が含まれている。19世紀後半の文豪である彼は、ロシアのウクライナ侵攻に何の関連があるのだろうか。関連性はまったくない。では、なぜ論争が起こるのだろうか。
まだある。ドイツ南部ミュンヘン市のライター市長は3月1日、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者で、プーチン大統領との親交で知られるロシア出身のワレリー・ゲルギエフ氏を解雇したと発表した。ライター氏の声明によると、プーチン氏に対する「非常に肯定的な評価の修正」をゲルギエフ氏に求めたが、本人が応じなかったため解雇の判断を下したという(3月1日付時事通信)。
著名なロシア出身のソプラノ歌手、アンナ・ネトレプコ氏が、米ニューヨーク市のメトロポリタン・オペラで今シーズンと来シーズンの公演に出演中止となった。プーチン大統領と公に距離を置くのを拒んだ結果だという。同歌劇場のゼネラルマネージャー、ピーター・ゲルブ氏は声明で「アンナは当劇場史上最も偉大な歌手の1人だが、プーチンがウクライナで罪のない人々を殺害している現状では、他に方法がなかった」と述べた(3月4日付CNN)。
自由民主主義の世界は独裁国家と同一レベルに転落し、学術や思想、言論の自由はすでに全体主義の前でひざまずいた。中国の文化大革命とどこが違うのか。同じではないか。いや、もっとひどい。自由や民主といった美辞麗句の下での欺瞞はより悪質である。
独裁制下の独裁は、少数による独裁であり、多数の反抗によって滅ぼされ得る。しかし、民主主義下の独裁は、大多数による独裁であり、少数による独裁よりはるかに悪質である。
西側メディアでは、「ロシアが悪」一色になっている。世の中は100%の悪も100%の善もない。善悪の二極化はたった1つの事実を示唆している。それはつまり、全体主義の台頭、民主主義社会の独裁化である。
西方諸国にも、文化大革命がやってきたようだ。