流氷紀行(10)~ブッフェあってのフレンチ、観光客市場に異変

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 2月14日、北海道旅行の最終日、サロマ湖鶴雅リゾートに宿泊する。

33715_1サロマ湖の夕日

 大雪原に変身した雄大なサロマ湖を見下ろす和洋折衷のリゾートホテル。天然温泉「ワッカの湯」とユニークなオホーツクフレンチが目当て。

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33715b_2ホテルの客室で野鳥観察

 バレンタインデーとあって、朝夕2食付、スパークリングワインのハーフボトル付きで、2万1400円という特別料金。しかも、面白いことに、夕食はブッフェかフレンチコースが選べるようになっている。もちろん、レストランも違う。当然、私はフレンチコースを選ぶ。どう考えても、ブッフェよりフレンチコースの方が高いに決まっている。それにしても、ずいぶん面白い選択肢だなと不思議に思った。

 いざ、夕食の時間になって行ってみると、ブッフェレストランがある程度繁盛しているものの、フレンチレストランは立花家のテーブルを入れて2組だけだった。

33715_3メンメのソテー、真タチのポッシェ添え
33715b_3専用の浴衣と羽織でフレンチを食す

 「実は、いま、フレンチコースよりもブッフェの方、人気があります」、本日のサービスを担当してくれるシニアソムリエの川口健太さんがゆっくりと説明してくれた。「ブッフェの方、品数が多くて量もありますから、だいぶお得感が出ているようです。フレンチは、今は下火ですね。流行っていません。量も少ないし・・・」

 「量の問題じゃないでしょう。フレンチにかかっているコストは断然高いでしょう。食材も、料理人の手間も、中身がまったく違うんじゃないですか」、私は理解できない。

 「おっしゃる通りです。しかし、不況で、消費者の嗜好もどうやら変わったのです。ブッフェとフレンチを同じ料金にしても、このように、今日、バレンタインデーというのに、フレンチは2組だけ、さっぱりです」

 「それじゃ、フレンチの方が完全に赤字ですね」

 「そうなんです。幸いにブッフェの方、利益出ていますから、どちらかというと、ブッフェでフレンチをカバーするような形で、何とかやり繰りします」

 「じゃ、フレンチやめて、ブッフェ一本絞った方が利益がもっと出るんじゃないですか」、どこに行っても、職業柄、経営の中身を探りたくなるという私の癖からは抜けられない。

 「そういうわけにも行きません。美味しいフレンチを求める方も、常連の方もおられますから、フレンチを潰すわけには行きません。共存です。けれど、プロの私たちとしては、とても寂しいです」

33715_4フレンチレストラン「イストワール」

 マーケティング・セグメンテーション(消費者層の細分化)の原理に基づく伝統的なモデルが崩壊し始めている。不況下の日本の消費者市場では、様々な異変が起きている・・・

 といっても料理はなかなか美味しい。本日のメニューは以下の通りである。

Hors-d’oeuvre
キッシュロレーヌ、ズワイ蟹のサラダ添え
Poison
メンメのソテー、真タチのポッシェ添え
Suope
サロマ湖産牡蠣のチャウダースープ
Viande
豪州産牛リブロースステーキ、温野菜添え
Dessert
本日のシェフ特製デザート
Pain et beurre
パン・バター

Champagne
本日のスパークリングワイン (フルボトルをサービスしてくれた)
Vin Rouge
赤ワイン レ・ジャルダン・ド・スタール

Cigar
シガー キューバ産パルタガス・セリーD No.5 限定版2008 (持込)

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