<上海>創作和食・新都里、トイレも迷うほど演出に凝る店

 とにかく、店の場所が分かり辛い。看板は出ていないし、目だった標識やサインもない。少し不気味で無表情なエントランスに、いつも黒服の用心棒っぽい男が立っている。

 ここは、あの台湾系の日本料理店「新都里」。エントランスをくぐると、竹林とセメント通路。夜には足元の照明が良いムードを出し、「禅」の世界に誘う雅趣がある。このレストランは、何といっても、演出が抜群だ。日本好きな外国人を招待するには最適。

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 竹林とセメント通路は、有機と無機のコントラストを演出し、都会生活で疲弊しきった人間に潤い、和みと期待を与える。

 店内にもコンクリート打ちっぱなし風の無機質感が漂う。陶芸好きなオーナーの趣味も反映されたのか、食器はなかなか凝っている。日本酒を注文すると、お猪口を選ばせてくれると、思わず嬉しくなる。

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 私は、「新都里」の台北店(複数)にも足を運んだことがある。基本的に、コンセプトは同じ。少し驚くことに、上海店のスタッフのスービス品質はかなり高い。日系の日本料理店だと、中国人スタッフがロボットのように「いらっしゃいませ」と合唱する光景が日常茶飯事だが、ここでは、スタッフが自然な笑顔でサービスしてくれる。なかなか心地よい。かなり現地化された従業員教育が行われていることだろう。台湾人経営者ならではのパフォーマンスだ。

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 料理の方だが、基本的に創作系。私から見れば、本物を求める分には物足りなさが目立ってしまう。グランドメニュー一本で、季節のお薦めなどがないのが非常に寂しい。大食いなら3~5回行けば、食べつくしてしまう。

 味に関しては、恐らく高度なマニュアル化がされているだろうから、まあ、いつ行っても、ある程度安定しているし、特段と驚喜もなければ不満もない。ただ、出汁に関して、本格和食との差は歴然としている。美食家にしてみれば、不完全燃焼は避けられないだろう。

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 特筆に値することは、トイレ。デザインはかなり凝っている。あえてここで書かないことにする。興味のある方は、是非一度足を運んでみてほしい。トイレの内装もユニークだが、男女別の標識は可愛い。可愛いというか、男女の区別が付かないのだ。私が案内した女性客の中、間違って男性トイレに進入したのが5人。そのうち、慌てて退去したのが3人、誰もいないためそのまま用を足したのが2人。

 トイレから平然とした顔で席に戻ってきた女性客に、「トイレ、大丈夫でした?左と右、どっち入りました?」と私が聞く。「え、大丈夫ですよ。右側に入りましたが、何か?」と逆に不思議そうな顔をされた。「あの、男女別の標識、見ました?」。「いいえ、外人の男性が左に入りましたから、私は右に入りましたよ」・・・

 左は女性、右は男性、だった。

★日本料理・新都里
<住所>   上海市静安区巨鹿路803号 (富民路交差点西側)
<電話>   021-5404-5252
<営業>   17:30~23:00(夕)、11:30~14:00(昼)
<予算>   300元~800元/人