浴槽の防波堤、ため息連続の中国系5つ星ホテル

 北京では、今回某中国系の5つ星ホテルに泊まることになった。いろんな問題があった。

 まず、到着すると、親切にエグゼクティブフロアにアップグレードしてくれたのがありがたいが、いざ部屋に入ると、トイレに使用済みのタオルが積まれていて、清掃が終わっていない。

34861_2室内は立派、今回泊まった北京の某中国系5つ星ホテル

 デスクの引き出しから封筒を取り出して、使おうとしたら、なんと封筒の中に、領収書が数枚入っていた。前の客が使ったものと思って見たら、領収書の日付はなんと2009年11月。使用済みの封筒は、4ヶ月も見つからずに新品として放置されてきた。

 ミニバーの冷蔵庫を開けると、照明のカバーが外れていて、裸電球と電線類が無造作に露出していた。しかも、肝心な冷蔵機能がなく、中が常温になっていた。もちろん、温度調節つまみもない。

 一番気になる水まわりだが、案の定よろしくない。浴槽の周縁に、妙なプラスチックの防波堤があとから設けられていることが分かる。浴槽から湯水が溢れ出ることを想定して、通常凹陥状の排水溝を設け、排水口までの経路に勾配を付ければよかったのだが、基本的なディテール設計にもなっていない。

34861_3浴槽周縁の後付防波堤、水まわりの悪さを物語る

 フロントの対応も問題が大きい。お客様に目線を合わせて笑顔で対応するどころか、「うん、うん」と、鼻で応えているところは、役所を連想させる。そして、よく見ると、フロントカウンターの内側に、折りたたみ式の椅子が置かれていた。客のいないときには、フロント係員が座り込んで談笑していた。

 そして、前回、日系のホテルでも同様な問題があった。朝食のルームサービス注文カードを、1日目使ったら、清掃担当の客室係が補充していない。持ってこさせようと思ったが、面倒くさいし、朝食も冷め切ってまずかったので、2日目は朝食をとらずに空港へ直行した。

 クレームを付けない。2度と泊まることもないから、無駄な時間を使いたくない。中国は、いくら高速道路や空港、高層ビルといったハコモノを作っても、サービス業はまだ前近代的だ。サービス業を見下し、ホテルなら、プロのホテルマンというプライドをもてない。

 中国のホテル、高級ホテルも同じ、そこで働いている従業員の大半は目がうつろで、表情につやがない。「私、食うためにしかたなく、働いている」というメッセージを常時送っている。同じ人種の香港では、まったく状況が違う。「イエス、サー」「イエス、マダム」のサービスが、もし、植民地式といったら、イギリスに感謝するか、それとも叱責するか、消費者それぞれの判断に任せよう。