「立花さんのマンション賃貸契約の更新ですが、家賃はいまの9500元から6000元に値下げ、家主からOKが出ました。新契約をお送りしてよろしいでしょうか」
今朝、私がいま住んでいるマンションの管理会社から電話がかかってきた。
さすが、周りの中国人たちもびっくり仰天。なんと4割近くの値下げ!古いマンションだが、一応高級と名付けて、都心一等地の閑静な住宅街に位置し、徒歩3分のところに地下鉄の駅もできた。最近中古分譲では平米あたり3万元~4万元もする物件なのだ。
「9500元から6000元?それは無理ですよ、老板。いくらなんでも交渉は無理です。せいぜい8000元くらいかな、15%のダウンで精一杯でしょう。無理無理。6000元なんて、馬鹿にしているんじゃないかと、家主に蹴っ飛ばされます。上海人がやっても無理です」、上海っ子の運転手に笑われた。
私は、値切り交渉なんかしない。自社のサービス・商品は値切り交渉に応じないし、他社(他者)から物やサービスを購入する際にも、値切り交渉はしない。その代わりに逆オファーする。少し前、ブログ(「2010年06月01日 値切り交渉はご無用」)で以下のように書いている。
逆オファーは、どういうことかというと、たとえば、売り手が「100元」と売値をオファーする。すると、私はその品を吟味して、逆に買値をオファーする。50%から値切るとか、そういう枠には一切捉われない。ときどき、100元の売値オファーに、「30元なら買う、31元でも買わない」と逆オファーすることもある。「冗談じゃない、これじゃ、私は赤字だ」と売り手。「損して商売することはない。じゃ、取引なしだ」と帰ろうとすると、「分かった。30元でいいよ」と売り手が妥協する。それを見て、私は限りなく悲しくなる。50元から値切って70元で買った人間はまんまと騙されたのではないか。・・・値切り交渉はしない。「買う・買わない」、「売る・売らない」の決断だけ。経済学的には、値切り交渉は一種の取引コストである。買い手の値切りを予測して、高めの料金を設定する売り手、そして妥結ラインを推測しながら交渉していく買い手、まあ、この駆け引きを面白いと思ったら、それはそれでいいのかもしれないが、私はこの種の取引コストを省きたい。
マンションの契約更新に際して、私は、管理会社経由で家主宛にレポートを提出する。レポートとは、日常コンサルティング現場で顧客に提出するものと基本的に同じ形式だが、その略式版(A4 紙1枚)である。内容は、ミクロ評価とマクロ評価、分析、結論に分け、作成する。
ミクロの部分はマンションの管理状況と部屋の現状(保安・安全、清潔、利便性、設備の償却状況、全体評価)、マクロ部分は不動産相場、短・中期予測、それぞれ事実を列挙しながら、評価する。そのうえで、6000元という逆オファーを提示する。最後に、(協議破談)更新不能で私が転出した場合、家主に発生するコスト(内装、家具新調、新規テナント募集、空き部屋の無収入期間、新規斡旋による仲介料)をざっと見積り、私の逆オファーである6000元の正当性だけでなく、家主に対しても有利な価格設定であることを論理的に立証した。
そして、最後の最後には、逆オファーは「交渉無用」であること、つまり、「イエス」か「ノー」の回答待ちであることを明示した。
本日来た回答は、6000元という私の逆オファーを全面的に受け入れる「イエス」だった。値切り交渉はまったくなかった。
「中国では、値切り交渉が当たり前」というのは、誤認である。私は、中国で一切値切り交渉に応じないし、自らも値切り交渉をしない。交渉にかかる取引コストの節約という経済性だけではない。ふっかけなし、不当廉売なし、取引対象物に対する適正な市場価格設定、取引双方に対する利益の最大化という事実を明確にすることによって、取引双方に高い納得性をもたせる。このような趣旨が込められている。






