「円キラー」の人民元、銀座8丁目で見える赤提灯の影

 東京都中央区銀座8丁目8番地8号。

 中国系の人ならこれ以上ない縁起の良い数字だと気付く。その場所にあるのは、HSBCプレミアセンター銀座支店。たまにしか日本に戻らない浦島太郎の私の目には、このHSBCは異様に映ったのだった。

41383_2

 日本の富裕層を狙った外資系金融機関の躍動感が一気に伝わってくる。

 中国政府がHSBCと中国銀行の2行に対し人民元建て預金の取り扱いを解禁したことをうけ、日本国内の円が元に吸い取られる流れは、中長期的に確実になるだろう。日本国内のHSBCプレミアセンターは、日本人向けの人民元口座の開設を5月から始めた。当座、入金できるのは年間5万ドル上限だが、いずれ規制緩和すれば、増加に転じることは間違いないだろう。

 ドル円相場が80円台に突入すれば、いよいよ円の先高観も弱まり、低金利のうえ、魅力ある投資先のない日本国内の個人マネーが海外に流出する。そのなかで、人民元は何といっても魅力たっぷりの投資対象となる。

 同時に注目すべきところは、中国政府の元に対する取り扱いである。長期的に人民元資本勘定の自由化の流れは確実だし、元の国際化、あるいはアジア地域におけるメジャーカレンシー化も遠くない将来に現実になるだろう。

 その結果、いずれ円が元に流れていく。気がつけば、雪崩を打ったように流れていく。すると、大問題が発生するのは、日本国債である。数年後、日本国債の暴落、デフォルトの宣告があるとすれば、人民元が隠れた「円キラー」である事実も明るみに出るだろう。

 そのとき、格安の円資産を求めて、「チャイナマネー」が日本に流れ込む。銀座通りの不動産を次から次へと買いあさるのが中国資本になるだろう。80年代末当時、バブルの勢いでニューヨークのロックフェラーセンターまで買い占め、我が世の春を謳歌する日本勢だが、まさかわずか30年後、日本がアメリカの二の舞になるとは夢にも思っていなかっただろう。しかも、あの中国にだ。

 銀座通り。クリスマスのイルミネーションに、春節の赤提灯も加えられるのは、時間の問題だ。銀座は中華街へ化していくか・・・。